次富

※次♀富(球児×女子高校生:幼馴染み)


知ってるから言えないけど、せめてあたしも鏡になって返していけたらいいな、って思うんだ。

***

幼馴染みの恋っていうのは、紆余曲折で。知りすぎているからこそお互いのことがよく見える分、それに戸惑いを覚えたりするし、分かっているつもりでもいるから言葉足らずでぶつかったりする。それが特に言葉数少ない相手なら尚更。
だけど、だからそこ嘘をつかないあんたがあたしは好きなんだ。
ほんとは普通のカップルみたいに普通に普通のデートをして、二人で大人の階段登っていくもんだけど、野球に忙しいあんた相手じゃそんな些細な願いも叶わない。

「三ヶ月までが蜜時じゃん」

と言ったのはどの子だったかな。あんまり真剣に聞いてなかったからうるおぼえだけど、あたしらの三ヶ月は結構普通に今までと変わらず過ぎていった。だって来年度は最後の甲子園、もう二度と目指せないその時を一生懸命にならないなんて信じられない。
普通のデートも、手を繋ぐことも、口づけかわすのも、全部これから一緒ならいつでもできる。全部全部終わったらきっとあたしもおねだりひとつくらい出来るようになってる予定だから。

いつかいつか、無口な唇で優しい愛をあたしにちょうだい。

かあん、といい音でボールが弾ける音がした頃。緩やかになった風が土の匂いを運ぶ。今日も土の香りをまといながら待ちぼうけいするあたしを迎えにくる。
生え始めたばかりの若葉に体を預ければたんたんと眠りにつくのは簡単なことだった。最近よくみる初めての口づけの風景には勿論幼馴染みの恋人相手で、色気もなく汗と土混じる優しい香りだけ残してる。

***

またこんなところで寝てる、とため息ひとつ落とす。帰ればと言えばケンカを売ったわけでも食いかかりぎみで拒否された。男勝りとはいえ女子高校生という自覚は少しくらい持ってもらわなけられば、こちらも気が気ではないというのに。
特に最近は妙に身長差で除くように見上げられると、正直息を飲んでしまう。誘われている訳ではないのだろうが、そうであるかないかは差ほど関係なくこちらは反応してしまう。
練習というわけではないけど、まだなんもない俺にきらきらした視線を送ってほしいから、君の知らないうちに想いを落とそう。そして少ししたら何気ない顔して一緒に家路を歩こう。

甲子園にたつ俺をみて、もっともっともっとどきどきして、もっともっと俺を好きになって、それで極めつけに君にとっての初めてをプレゼントしよう。忘れられない記憶を君に刻み付けよう。

「口づけは嘘を閉ざす」




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