▽残り97日▽



「要するに、途中で寝てたと」
「すみません……」


翌朝――いや、翌昼。
片付け途中の荷物に四方を囲まれた状態で目を覚ました私。

見慣れない天井をぼんやりと見つめながら身体を起こし、部屋の様子を眺め、目を擦り、数十秒の沈黙を置いた後。


「あ」


寝る前の記憶を、思い出したのだった。

手ぐしでさっと寝癖を直してそっとリビングへ出ると、「お前今何時だと思ってんだ」と言わんばかりに視線を寄越した樹さん。
びくり、と肩を揺らす。


「片付けは」
「それが、その……」
「あの後しばらくして物音が聞こえなくなったのは、俺の気のせいか」
「気が付いたついでに部屋に来てくだされば……」
「女の使ってる部屋に入るわけねーだろ」
「はい……」


二日目からいきなり失態を犯した私は、寝起き早々樹さんから呆れ顔を向けられていた。
申し訳ない。非常に申し訳ない。
そんな中で、「お風呂を借りたい」と言い出すまでの葛藤は相当だった。

部屋から適当な服を取り出して、お風呂へ駆け込む。
シャワーを浴びながら脳内反省会。
リビングに戻ったときテーブルに昼食が完璧に用意されているのを見て、心が折れた。


「明日からはちゃんと頑張ります……ごめんなさい……」


そんなこんなで少し遅めの昼食が終わり、私は片付けの続きに取り掛かった。
タンスやクローゼットの類は置いていなかったので、紙袋や包装の箱を使って仕分けをしていく。

衣服だけでなく歯ブラシやくしなどの生活雑貨も充分揃っていて、買い足さなければならない物は無いのではないかと思うほどだった。

(これ、マスターが揃えてくれたんだよね……?)

ここに来てからまだ買い物をしたことが無いのでどんな仕組みなのかは分からないが、服のサイズや女の子が必要な雑貨というのはそんなに簡単に分かるものなのだろうか。

ずっと一緒にいたはずなのに、一体どのタイミングで準備したのかも気になる。


「何でもアリ、ってことなのかなぁ」


タイミングがあったら樹さんに聞いてみようか。
そんなことを考えながら、手を動かし続けたのだった。



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bkm

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