小さく、それでも主張し切れていない蝋燭の明かりがゆらゆらと揺れる。
健気に灯る炎を手助けする様に差し込む月明かりは、グラスの中に泳ぐワインを綺麗に見せた。

スポットライトを浴びたワインをひとくち口内へ注ぐと、ツンと鼻腔を刺激。
酔ってもいいのよと上等な女に囁かれるみたいな感覚に陥ってしまいそうになる。

舌で転がされた液体は既に喉を通り過ぎ、しばしエロティックな気分に浸れそう。
良い気分のまま月へと視線を向ければ狼の寂しそうな声。
ゆっくり、ひとつだけ、まばたき。

控えめにため息をついたなら、どうしたの、そう問われ。しあわせだ、一言答える。
なにそれ、そんな風に笑われたなら、おまえの方こそ。言い返してやった。

この瞬間が好きだ、この瞬間が愛おしい、この瞬間が、掛け替えない。

いつか君は言ったねと、次の言葉。
何をだ、再び答える。
しぬときはおまえといきたいものだと。俺も、今そう思うよ。叶わないけれどね。
視線は斜め下。目の前の人物が儚げに笑む。
視線は直線。目の前の人物を切なく見つめる。

目の前にやっていた目線は、再び月へと移された。
斜め下へいっていた視線は、今度は目の前へ。




(今が過去になっても、きみへの想いは過去にはならないよ)
(肝に命じよう)

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