(勇魔)
(お酒ネタ第二弾)












いつもみたいに。
俺は、彼の城の、彼の部屋で
大好きな彼と甘い時を過ごす。



ただいつもと少し違うのは、彼へのプレゼントがあると言う事。

別に、何てこと無い、いつもと同じ何でも無い日なんだけれども。
たまたま今日はバーのおじさんに貰ったワインがあって、それをガノンと共有したいなぁと思ったのだ。

きっと彼は、高級なお酒なんてものは日常茶飯事で飲んでいるのだろうけど…。
俺と飲むのを、喜んでくれるだろうか。


わくわく半分、どきどき半分。
そんないつまでも初恋してるかのような初々しい感覚は、決して嫌では無い。










「・・・ワイン?」
「そ! 俺と飲むの、嫌かな…?」
「……別に、嫌だ等とは言っとらん」
「良かった! それじゃ、グラスを…」


―――といった経緯があり、二人で飲み始めたまでは良かったんだけど。


「ガノン、もしかして君…、酔った?」

そう、彼の様子が、一言で言ってしまえば変なのだ。
何がどう変なのだと詳しくは言えないのだけれど、何と言うか、雰囲気が。

「何を言っている、酔って等おらん」
「そう、だよね」

口調はいつもと変わらないのだけど…。

違和感を残しつつも、俺はさして気にしない事にした。





「「 あ。 」」


そろそろ何か口に入れようかと、目の前のつまみに手を伸ばしたその時。

俺とガノンの指先が、触れた。

「ごめん」
「いや、」

少し気まずくなっちゃったな、なんて思いながら
俺はふと目に止まったガノンの手を掴んだ。


「どうした?」

ガノンが小さく首を傾げる。かわいい。

…じゃなくてっ

「やっぱり、ガノンの手は大きいなぁ」
「嫌か…?」
「まさか!俺を包み込んでくれるこの手が、大好きだよ」
「ふふっ、貴様に褒められるのは嫌いじゃないな」


  (う、わ―――)


ふわり、と笑んだガノンドロフは、まるで別人みたいだった。
こんなのが魔王してるのか、と思えるくらいに柔らかな雰囲気を纏った彼は、とても綺麗で可愛くて。

(こんな表情、出来るんだ。)
酔いが心地好いのだろうか、初めて見るガノンの笑顔に、俺の心臓は破裂しそうな程動悸が激しい。


「ガノン?」

どきどきしながら、彼の名を呼ぶ。

「ん?」

優しく口角をあげたそのままに、ガノンは俺に視線を向けた。

「俺の事、好き?」
「な、どうした?急に」

俺のいきなりの質問に、顔を赤らめるガノン。
けれど気を悪くしたわけでは決して無いみたい。いつもなら馬鹿な事を聴くなって怒るのに。

調子付いた俺は、更にガノンを苛めてみる。

「顔、赤くなってる。照れた?」
「〜〜〜っ、ばかっ……。好きに、決まってるっ」


ああもう、なにこれ、なにこれ

不意打ちすぎ。



「あのさ、君…小悪魔系?」
「は?」

何を言っているんだと言わんばかりに、ぽかんとした顔を浮かべるガノンの頬に手を添える。

少しぴくりと肩を揺らしたガノンに苦笑しながら、俺は顔を近づけた。

きゅっと、ガノンが目を閉じる。



「っ・・・・、?」

一向に変わらない状況を不思議に思ったのか、ガノンの瞳が徐に開かれた。

しかし変わらずのゼロ距離に驚いたのか、ガノンは益々頬を赤く染め顔を背けた。

俺はそんなガノンの顎を掬い、此方を向かせる。


「キス、されると思った?」
「〜〜〜〜っ!!?」


言葉にならないといった表情を浮かべるガノンに、にやりと笑うと
軽くリップ音をさせキスをした。

すぐに唇を離すと、ガノンは赤くした頬はそのままに、複雑そうな表情を浮かべた。

「足りなかった?」
「っ・・・い、意地の悪いお前は、苦手だ…。」

眉が寄せられ、ガノンの目線が下に下げられる。

くそう…可愛い……。


「けど、好き?」

一度離した唇を、再度寄せる。
今にも泣きだしそうな彼に、容赦なんて出来ない。
だって、可愛すぎる。

「い、言わないと、だめか・・・?」

勘弁してくれと言わんばかりに、俺から何とか逃げようとするガノン。
けれど、俺はそれを許す気なんてさらさら無いし

そんなカワイイ表情されたら、もっと苛めたくなるじゃないか。


「だめじゃないけど、キスはしてあげない」

こんな事言ったら、もっと困った顔するんだろうな
そんな事を思いながら、くすりと笑みを零す。


けれど


「っ、」

二度目の、リップ音。

どうやら困らされたのは彼じゃなく、俺の方だったみたいで。

「お、お前が言ってくれないなら、俺が、する…っ」




俺を睨む様にしながらキスしてきた可愛すぎる恋人を押し倒さない理由が、どうしても見当たらなかった。
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