ぼうっと揺らめくランプの中の小さな炎は、ただ其処にあるだけで何だか心が温かくなる。
それが君と一緒なら、尚の事。




俺は君の手を取った。
君は、俺のなすがままに。

少し目を細めて、上目遣いな君の瞳と目が合った。
君のものが俺のそれと交わりあった瞬間、君は頬を染めてすぐ逸らす。

ひとつひとつの仕草がとても愛おしくて、この空間までも幸せと感じれる程に。
俺は今、ひどく満たされた想い。


だのに、

君はしあわせの中に宿す確かな哀愁を隠しきれずに俺を目に映す。






小さく音が聴こえた。

かわいらしい、赤子の吐息の様な音。
唇を愛しい彼の元から離すと、君は目を伏せる。
恥ずかしいのか、震える睫毛は強面な彼とは似付かわしく無く意外と長かった。


「ガノン」

静寂の中
俺は彼の名を呼んだ。

「…何だ。」

一呼吸程置いたら、君が答える。

この掛け合いがなんとも心地よい。




俺が何も言わずにいると、彼は困った様な顔になる。
…と言っても、その変化は大変微々たるものだけれど。

君が俺にだけ見せてくれる、大好きな表情。
君のその表情が好きだよと、言ったら君はこれ以上ないくらい顔を赤くさせるのだろうか。

それはそれで見てみたい。



「…リンク、」
「ん、?」

俺はほほ笑む。
それも、
飛び切り甘く。

彼が目を逸らす。
君は本当に俺のこの顔に弱くて、

かわいい。


俺を見たりかと思えばすぐに視線を外したり忙しい。

「その…、」
「うん」

言い難そうにしている彼の手を握る。
君の手が震えた。

「大丈夫だから、言って…?」

そのまま指らを絡めると
彼は泣きそうに絡まる手と手を見遣った。



「ガノン」
「っ…」

彼の背を押す様に、俺は名を呼んだ。

それでも言いだせずにいる彼が、焦れったくも愛おしい。


「なぁ。
  頼むから…君の本心が聴きたいだけなんだ…。」

ずっと言えずにいた、君の胸の内を。

今だからこそ、聞いておきたいんだ。



「……、たぃ…。」

暫く振りに開かれた彼の口から、小さく音が発せられた。

「え…?」

けれど残念ながら上手く聴きとれず、申し訳無くも聞き返す。




「おまえと、肌を……合わせ、たい、」



死にそうな程に顔を真っ赤にさせながら、
君はそれでも俺の手をぎゅっと握って。


「うん、
    俺も。」

俺はおかしくなりそうなくらい嬉しい気持ちで支配されて、
震える声を何とか抑えつけながら
彼の髪を撫ぜキスをした。










ランプの明かりが君を薄暗く照らして、それが何とも厭らしく俺の目に映った。

とても頑丈な造りをしているのにしなやかな君の身体を俺の指が辿れば、君の身体は魚の様に俺の真下で勢い良く跳ねた。


「感じる…?」
「っ〜〜、」

息を詰めた君は、俺の問いに必死に首を縦に動かし
これ以上は無理と懇願の目を俺に向けた。

俺は薄く笑んだ。
今からの彼の痴態を想像して。


「〜〜〜ッ、!!」

今し方俺が頭に浮かべた通り、彼は身体を善がらせ
口端から透明な唾液を垂らした。

俺が、彼の分身を可愛がったからだった。

はくはくと一生懸命息をしやるその様は、嗚咽を我慢しきれない子どもの様で何だか可笑しい。

「っり、りんく・・っ」

怯えた君の眼が、珍しく長い時間俺を捉える。
俺は舌舐めずりを。

「この手を離してあげても良いけど…、」
俺は続ける。

「俺の質問に答える?」

彼はこくこくと頷いた。


「君は今、何を思ってる?」

彼は一瞬、これまで快楽で強張らせていた身体を文字通り固まらせた。

「俺にこうやって、奥をかわいがられながら…、」

「ひっ・・――」

腰をぐっと入れ込む。
瞬時に恥部が閉まった。

「俺以外の別の事、考えてる。」
「ッ、あっ、あ・・・!」

目を見開きながら、
俺の両腕を掴んだその手に、既に覇気は無い。

「ねえ…、」

ぐっぐっと上に向かって腰を入れ進めれば
君は忽ち悲鳴をあげた。

「ッ、あっ、ち、ちがっ…、ちがっ、う…!」

いやらしく涎を垂らしながら、焦点の定まっていない危なげな目で必死に俺を捉えようとする。

「何が違う?」

少しばかり語尾を強めながら
君の弱点を責めた。

「い、ひあ―――!」

弾けそうな彼のアレを戒めながら
俺は君に拷問を続ける。


「っ、ひ、ぃ、っ、お、おまえ、の、っこと・・・っ、かんが、えっ、…ッ!」
「ホント…っ?」
「っ」

ガノンはゆっくりと頷く。

そして言葉をつづけた。

「次、お前に会ったら…、」

躊躇いがちな彼の言葉に、俺はうんと頷く。

「俺は、死んじまう。」

悲しそうな君の眼が、今度はしっかりと俺を捉えた。
俺の心臓は今まさに細いワイヤーで締め上げられ今にも千切れそうだった。

「死ぬのが、恐い…?」

ガノンの頬を包み込みながら、俺は彼に問いかける。

彼は今日、初めて首を横に振った。

「おまえと会えなくなるのが、すごく、こわい」



俺は今日、初めて快楽以外の彼の涙を、見た。



「うん。
  
  俺も、ね、 君に会えなくなるの、すごくすごく、恐い。」


両頬に添えた手に、彼の涙が染み込んだ。

「本当、か…っ?」

信じられないみたいな瞳で、俺を見る。
ばかだな、ほんとに。

「君、俺がどれだけ君の事好きか、ほんとに分かってないんだからなぁ」

参っちゃうよ、ほんと、

きみがそんなこと言ってくれると思っていなかったから、

ほら、


君以外の涙で、俺の手が更に濡れちゃったじゃない。



「っ――、俺、・・っおれ、は、ッ次、もし生まれる事が出来るなら、魔王なんて、やりたく、ない・・っ。」
「ばかだな、魔王じゃなかったら、俺に、会えないよ?」
「・・・・それ、は…嫌だ。」

いつになく饒舌で幼稚じみた君の言動は、今更ながらに新鮮で

「あんまり可愛いこと言うと、ひどくしちゃうよ」
「・・・構わない。」


後頭部に手を寄せ深く口内に舌を侵入させれば
俺の髪を掻き集める様にして引き寄せた君の大きな掌の体温が心地よかった。





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結構前からストックしてた台詞が、ようやく日の目を見る事が出来ました…。
しかし、まさかリハ文として出す事になろうとは…。色々考えながら温めていたのに残念。

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