あれから数日が過ぎた。
あの忌まわしき日から身体が回復するまで、随分と時間を要した様に思える。

……いや、実際時間がかかった。かかり過ぎた。
通常であれば身体の傷等、この強靭な肉体の前では意味をなさないというのに。
しかし内部まではどうあっても鍛えることは叶わなかった。

 くそっ…、ダークリンクの奴め…一体モーファの教育はどうなっておるんだ。

あれからガノンドロフは荒れた。
生まれて初めて、自分よりも劣る下等生物に敗北を許したのだから。
体内だったとはいえ魔王としてのプライドを傷付けたモーファを、そしてモーファの躾役として役付けしていたダークリンクを、絶対に許さない、と。俄然言葉も話せぬモーファよりも、より人間に近しいダークリンクへ怒りの矛先が向くのは必然だった。

 あやつを痛めつけてでも問いただし、モーファの失態の落とし前を付けてもらわねばならん。

大分物騒な事を考えながら、ガノンドロフは病み上がりの身体に鞭を打ち、ダークリンクの居るであろう場所まで向かう。

しかし。

ふと、ガノンドロフの足が止まった。

 ―― ……大丈夫、だよな。

ガノンドロフの頭に過ぎった心配事―――。
ダークリンクの居る場所まで辿りつくには、あの忌々しいモーファのいる部屋を通らなければならない、ということだった。

ガノンドロフはしばし考えた後、更に重くなった足をそちらへと向けた。








何故、嫌な事というのに限ってこうも早く訪れるのか。


流れる時の速さは同じだというのに、此処に着くまでが何とも不思議なまでに早く感じる事か…。
存外冷静な脳は、そんなくだらない事を考えていた。



ギィイ−−……

重く軋んだ音をさせ、重く湿った扉を開いた。

水でしけった空気が気だるげにガノンドロフの身体に纏わりつく。
一気に与えられた不快感に、ガノンドロフの眉が小さく動いた。


こつ、こつ、と、一人分の足音が広いフロア内に木霊する。
いやに反響するここで、自分の聴くに堪えないあの声が響いていたのかと思うと吐き気すら込み上げてきた。


嫌な気を振り払う様に、ガノンドロフは歩く速度をあげた。
先ほどから聞こえる己の足音のリズムが細かくなってゆく。




「・・・!」

一瞬、ガノンドロフは息を詰めた。

何かが動く気配を感じたのだ。
ガノンドロフの身体に、一気に緊張が走る。

まさかこの俺が、たかが魔物如きに脅かされているというのか…?
そんな屈辱的な事、あるはずが無い!と、気を取り直し先へと進む。


ごぽ、こぽぽ……

今度は、水が排水溝に吸い込まれてゆく様な、不快な音が辺りに響く。
先の緊張と相俟って、ガノンドロフは己の体が、更に強張るのを認めざるを得なかった。



いる。
やはり、ここにいるのだ。
そして、俺を狙っている。

何が、などと考えなくとも解る。
理由は定かではないが、奴は…モーファは、確実に己の肉体を欲している、と。

ガノンドロフはちっと舌打ちをすると、マントを翻し出口へと急ごうとした……


が、

「っ・・・!」

ばしゃあああっと派手な水音をさせ、ついにモーファが姿を現した。

「っ」

一瞬にして、己の身体の自由が利かなくなった事を理解する。
目にも止まらぬ速さで、モーファの触手の一部が、ガノンドロフの身体を壁に押し付けたのだった。



「なっ……!!」

ガノンドロフの目が見開かれた。

一寸の隙も見落とす事無く、そしてその隙に付け込む事が出来る程、果たしてコイツは強かったか?と、疑問が過ぎった。

いや、今はそんなことよりも。


「こ、の…っ、離せ!離さんか!俺はおまえの主だぞ!!」

自分でも何をそこまでと思う程、必死になって叫んでいた。

デジャヴの様なこの状況と、
そして意外とモーファの力が強い事に、ガノンドロフは明らかに焦った。





「ッ……!!!」

うそだろ、と思った。

以前より幾分も性急に、モーファの触手が己の内股を這ってきたのだ。
いつの間にやら両足首は拘束固定され、両手は後ろ手にされていた。

自慢のマントは、次々と生み出される触手によってあっという間に剥ぎとられてしまっていた。

随分と軽装になったガノンドロフを見定める様に、触手がねとねととした動きを見せる。
まるで目でもあるかの様なその行動に、ガノンドロフの頬が染まる。

「いい加減にせんと、破壊するぞ!!」

怒声が響き、空気がぴりぴりと鳴く。

この鶴の一声で、屈強な肉体をした上級魔物どもを散らせるというのに、当のモーファはといえば、けろりとしている様に見えて仕方が無い。


「っ、ッやめ…!お、おいっ!?」

今まで太股を這っていた触手が、ぴっちりと肌に張り付いたスパッツの間に強引に侵入した。

ガノンドロフのむっちりとした太股に吸いつくように張り付いたスパッツの中を進んでいくのは相当にキツイらしく、触手の動きもとても遅い。

今ならまだどうにか出来るやもしれんと、動けない足を何とかかんとか出来る限り暴れさせ、中の触手を追い出そうと躍起になっていると、今度は上の方に痛みを感じた。

何事かと目線をそちらへ向けると、同じくぴったり張り付いたインナーの中へ侵入した触手が、何やら地肌を傷つけているらしかった。
その触手は、鎖骨、脇下や背筋へとランダムに小さな痛みを与えた後、今度はぐるりと回り前へ戻ってきた。

そして、

「っ〜〜〜!!?」

以前は甘い感覚しか与えられる事の無かった、胸の頂きへの鋭い痛み。
ガノンドロフは喉を仰け反らせながらも、漏れでそうになる声をひたすら抑えた。

この痛みはなんだ。
まるで、何かに吸われているような…。

やがてその感覚ははっきりとガノンドロフを襲う様になった。


「ッ、く…っ、ぅっ、ッ゛ん」

胸の頂きを強く吸われた…かと思えば、今度はぬるぬるとした穴みたいなものが、ガノンドロフのそこを吸っては吐きを繰り返しているようだった。

この感覚は……。
ガノンドロフの脳内に過ぎる、あの出来事。

―― この感覚を知っている。

その瞬間、彼は悟った。
以前抱いた女に口内で胸を攻められた事があったのだが、それにそっくりなのだ。
その時は全く何を感じるわけでも無かったのに、この差はなんだ。

触手の内壁が縦横無尽に乳首に絡んでくると、上手く呼吸が出来なかった。


「はっ…あっ、く、そっ……クソ、ッ、っ…!!」


もはや足の動きも止まり、がくがくと震えている。
すでにガノンドロフの目には涙が浮かび、吐く息は荒い。頬も完全に蒸気している。

胸だけの刺激でぐずぐずになった下半身が、悲鳴をあげる。


「っんア…・・・ッ!」

ついに、今までとは比べ物にならない、あられも無い声が漏れた。

下の方でガノンドロフを苦しめていた触手が、とうとう陰部まで辿り着いてしまったのだ。

鼠蹊部を撫でられた途端、ガノンドロフの全身の力が抜け、完全に触手に体重を預ける形になってしまった。


「ッあ!、ァっくそ…っ、や、めろッ、そこ…ッ、はぁ…!」

びくんびくんと、意思に反して身体が跳ね、足が震える。

一通りその場所を右往左往し、どうやら堪能したらしい触手が、今度は後孔まで移動する。
一瞬はっとしたガノンドロフだったが、制止の声は喘ぎに埋もれた。

スパッツの上から、別の触手がガノンドロフのペニスを飲み込んだのだ。
生温くそしてヌルついたそれが大きな口をぱっくりと開け、くぽくぽとまるでイソギンチャクの様にガノンドロフの大きなペニスを貪る。

止め処なく溢れ出てくる先走りによりスパッツは変色してしまっているのに、更に黒い染みを広げようとするかの様に、触手がそこへ吸い付く。


「くぅ゛うッ〜〜〜っっ」

歯を食いしばり刺激に耐えるガノンドロフの瞳からは、たくさんの涙が零れ落ちた。

しかしモーファがそんな事を気にする筈も無く、固く閉じた後孔の窪みへ、触手の先端がぎゅぷっと入り込んだ。


「ッ………!!!!」

声にならない声を張り上げ、無意識のうちに穴を締め付ける。
しかし、拒むはずだったその行為により更に奥まで入ってしまった触手に、ガノンドロフはついに悲鳴をあげた。



「、っひ、あ、あ・・・、……ッ!」

くぷくぷと、奥まった部分を、まるで我が屋の如く触手が攻め入る。
好き勝手に奥へ奥へと侵入を続ける触手に、ガノンドロフの両足が緩く開き始めた。


「ふはっ…、は、はあ、あ、ァ、待っ……、そ、こ…っ」

いつの間にか両足首を結んでいた触手らは姿を消し、ガノンドロフの孔を犯していた。

それに気付く余裕も無いままに、彼の両足が徐々に開かれる。


浅く、下の方にある『あの部分』を、尚も奥への侵入を諦めない触手の肌が幾度も掠れ、その度にガノンドロフの身体がびくびくと震える。

時折潰されるようにして抉られれば、彼のペニスが涙を流した。



「っ、はっ、はァ、あっ、…・・・ッ、んっ、んんんんッッッ」

何度も何度もそこが刺激され、最早アレが限界だった。

けれど、どの触手も一向にそこへと伸びてくれる気配を見せず、段々と、ガノンドロフの中に苛立ちが募る。


「あ、もっ…、イく。い、く……ッ」

よもや我慢出来ぬ、といった体で、ガノンドロフは腰を揺らめかせた。
しかし、肝心のペニスが、どの触手にも当たらない。

まるで、意図して、そこに触らないかのように。


「っ、んっ、んっ、んっ、ふっふっふっ、うっ、あっ、やっ…、や、だっ・・・ッ、も、いくっ、いく、いく、ってば……ッ、あっ、あっ、あっ、さ、わって……ッ、さわ、ってぇえ……ッ!」

ついに涙を流し懇願したガノンドロフの中に、最早魔王としての自尊心等は欠片も残っていなかった。

ただただ与えられる苦痛でしかない理不尽な快楽から、逃れたかった。


けれど。


「ッ、ふあ、あ、っ、な、んで……っ、あっ・・・モーファ、もーふぁ・・・!」

どれだけ己の腰を触手に擦りつけようと。
今、自らを支配している触手自体が、そこに触ってくれなければ。


「、い、あっ・・・・・・ッ、ィ、くっ……、ッ、っ、゛」

いつまで経っても、射精出来ないでは無いか。

「やだ、嫌ッ……、い、いか、せ・・・・・・ッ、モーファぁあ」

不自由な両腕を軋ませながら、ガノンドロフは本格的に泣いた。

苦しくて、気持ちよくて、出したくて、どうにかなってしまいたくて。

口もきけぬ下級魔物へ、懇願した。







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神殿内の構造、勝手に捏造しちゃってすみません(-v-;;)
モファガノは、ただただエロいのが描きたくなった時に描いちゃいます…。笑(…)

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