気付いたら、戻れなくなってた。
元の世界にも、元の自分にも。


気付いたら、失ってた。
過去の自分を、これからの自分を。


気付いたら、抜け出せなくなってた。
おまえの手の中から。







ほらもっと締め付けてよ、と口許を三日月に歪めながら奴の手が俺の肌に伸びる。

些か強めに奴の指が俺の脇腹を抓れば俺の口から汚く高い声が漏れた。
ぎりりぎりりと爪が食い込む感覚を覚える。痛い。

しかし苦痛でしかないはずなのに慣らされた浅ましい身体は酷くこの痛みを喜んだ。
あそこが締まる。それと同時に、奴のが奥深く飲み込まれる感覚。苦しい。


奴が息を吐く、俺に罵詈を浴びせながら。
口を吐くその言葉らは耳を覆いたくなる程のそれなのに、それでも俺は喜んだ。

俺を見ながら、
俺にだけ吐いてくれる、その科白が、


どれだけ虐げられても
どれほど嬲られても

そのたび俺に植え付けられる傷が、残っては消える事無く更に抉られて奥深くふかく、刻まれてきもちいい、心地いい。

だから、だから

もっと俺を、おれの 心を、見てほしい、と  お もう。





「ねぇ、次はどんな風に愛したげようか」

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