企画 | ナノ

 今日も清清しい程の朝だ。昨日の事で寝不足な私には、太陽の光は殺人的な威力を放っている。欠伸を噛み殺しつつ、簡単に朝食を食べ、学校へと急ぐ。登校している学生は私だけではなく、小学生や中学生等も混じっている。その中で、集団から頭一個分……それ以上抜き出ている長身の背中を見つけた。目立つ緑色の髪に、手にはパンダの置物を持っている。どうやら今日のラッキーアイテムらしい。私は何度か咳払いをして、心を落ち着けるために深く息を吸った。

「緑間くん、おはよう!」

 声を掛けると、緑間くんはちょっとびっくりしたように私を見下げた。「ああ、」と何とも歯切れの悪い返事が返ってくる。私は彼に違和感を覚えたが、その正体まではわからなかった。

「えと、今日は遅いね。朝練は?」

 人一倍努力家な彼は朝練も欠かさずに行っており、朝早くから学校へ行っているのだ。珍しく登校が一緒になったので、私は不思議に思いつつ尋ねた。

「……少し、眠れなかったのだよ」
「え?なに、悩み事?」

 本当に今日は珍しい。あの緑間くんが悩んでいるのだ。大抵のことをおは朝占いで乗り切っている彼が、眠れなくなるほど悩んでいる。私は心配しつつも、これはプレゼントのヒントになるかも、と思いつつ聞き出そうとした。だが、緑間くんは私を一切見ずに「何でもない」と頑なに答えようとしない。
「ねえ、」不安になり、思わず緑間くんの腕に手を伸ばした。だが指先が触れた瞬間、反射的にバッと振り払われてしまった。え、と私は目を見開いた。手がじんじんと痛みだすのを感じてようやく気付いた。私は今、緑間くんに、拒絶されたと。
 呆然とする私に、緑間くんはハッと我に返ったように目を瞠った。一瞬、視線が交わるもすぐに気まずそうに逸らされた。

「……高尾と、付き合っているのだろう。なら、俺にあまり近付かないほうがいいんじゃないか」

 ぽつりと零すように呟く緑間くんに、私は立ち尽くすしかなかった。付き合ってるって、誰と誰が? え、なに、なにこの展開。
 やばい、泣きそうだ。




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