ボクはクダリ。サブウェイマスター。ダブルバトルと、なまえが好き。
「なまえー!」 「やかましいです」 「なまえ、あのね、今日もボク勝ったよ!」 「おめでとうございます」 「もっと誉めて誉めて!」 「調子に乗るなよ」
なまえは怖い顔をしてボクを睨んだ。でもなまえはボクよりも頭一個分くらい小さいし、何より可愛いなまえに上目使いで睨まれても全然怖くなかった。小動物のような目がキッとつり上がっていて、たまらずボクはなまえを抱きしめた。
「なまえ可愛い!」 「ぎゃー!」
離せと喚くなまえに、周囲の人は何だ何だと見てくるけど、ボクとなまえだとわかるとああまたかって顔をして、あとはもう無視だ。ノボリでさえ呆れたように溜め息を吐くだけなのだから、驚き。ボクは怒られないから助かるけど、なまえはそうじゃないみたい。
「ちょ、なんで皆さん助けてくれないんですか! あれ!? そこの駅員さん、上司がサボってますよ!」 「ボク今休憩中、仕事ない」 「サブウェイマスターって暇なの!? ねえ誰かノボリさん呼んできて! 弟がちんたら油売ってますよ!」 「ノボリには言ってあるから平気」 「なんでそんな用意周到なんですか!」
「なまえに会いたかったから」素直にそう告げると、なまえは一瞬黙り込んだ後ぼっと火が着いたように真っ赤になった。それがすごく可愛くて、ボクはぎゅうぎゅう強く抱き締めた。
「ちょ、くるし、」 「なまえ、最近毎日バトルサブウェイに来るね?」 「!」
なまえがピタリと動きを止めた。
「ダブルで十九連勝までしか行けなかったんだってね。惜しいなぁ」
もうちょっとでボクと戦えたのに。なまえの耳元で囁くように言うと、腕の中で細い肩が震えた。 「な、なんで、知って」これ以上ないくらい真っ赤になったなまえは、プルプル震えながら顔を上げた。瞳にはうっすら涙が溜まっていて、ちょっと、いやかなり、ぐっとキた。
「ボク、サブウェイマスター! 何でも知ってる!」
にっこり笑うとなまえは何かを言いかけて、やめた。俯くなまえを最後にぎゅっとして、離れた。ふと視線を感じ、首を巡らせば自分と同じ顔と目が合った。ノボリの奴、眉間に皺が寄ってる。腕時計を指差しており、休憩時間が終わったことを示している。あーあ、もうそんな時間か。
「早くここまでおいで」
なまえの頭をポンと撫でれば、なまえは真っ赤な耳をしてこくりと頷いた。可愛いなぁ、ここが駅のホームじゃなかったらなまえが好きだって叫べたのに。
いつか知れること 20120422⇒back |
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