小ネタ置き場 | ナノ
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 授業が終わり、いざ帰ろうと教室を出たところでいきなり長身の男共に囲まれてしまった。なにこれリンチ? と頭を上げれば、そこにはよく知る顔触れが。

「え、なに」
「お前水戸部に何かしたのか」

 眉間に皺を寄せた日向が重苦しく口を開いた。なぜここで水戸部が出てくる、と首を傾げる。すると横の伊月が「先日から水戸部が元気ないんだ」と説明してくれた。ますます首を傾げる。なぜそこで私に尋ねるのだ。

「知らないよ。ていうか水戸部と喋ったことない私に聞かれても」
「いや俺らも水戸部が喋ってんの見たことねーし」
「それこそ知らねーよ」

 日向の横をすり抜けようとすると、廊下の後方から「おーい!」と元気良く走ってくる小金井とそれを追いかけてきたであろう水戸部の姿があった。

「お前、なんで水戸部の誕生日祝ってやんなかったんだよ!」

 ぷんぷん怒る小金井に、ぎょっとした顔で硬直する水戸部。対して私は「誕生日?」と頭にクエスチョンマークを浮かべる。
「十二月三日は水戸部の誕生日だったんだよ」と横から伊月がこっそり教えてくれた。そうだったのかと納得する私に、小金井はさらにぷんすか怒った。「やっぱり忘れてたな! あんなに教えたのに!」生憎私は人の誕生日はすぐに忘れてしまうタイプである。

「水戸部のやつ、お前が忘れたせいで落ち込んでむぐっ」

 これ以上喋らせるかと言わんばかりに、水戸部が後ろから小金井を羽交い締めし口を塞いだ。一文字に結ばれてる唇はいつものことだが、真っ赤になった彼は小さく口元を震わせている。え、なんだその顔は。いくら鈍い私でもそんなわかりやすい反応をされれば、こちらまで恥ずかしくなってくる。何か言わなければと焦るが、口から出るのは「あ、えと」と言葉にならない。とりあえず背後でにやついてる男二人の鳩尾に拳を叩き込んでやった。

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テーマ「人外ファンタジー」
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