「あっちー」
「あついですね」
「よし、サボりやしょう」
「サボりませんよー」


ふらっと何処かへ行こうとしてしまう隊長の袖をぐっと掴んで引き戻す。彼は意外にも素直に元通りまっすぐ歩き出した。

梅雨もあけて、気温も急に夏らしくなった。太陽はわたしたちの背中をじりじりと照りつけるし、外には夏休みに入ってはしゃぐ子供たちがあいすを片手に走り回っている。


「あつい」
「ですねえ」
「俺は夏は嫌いなんでィ」
「なんでですか?」
「暑いから」


きっとこのひとは冬は寒いから嫌いとか言うんだろうなぁとか思いつつも、そうですかとだけ返事をして側の川を眺める。陽の光を反射して、きらきら光って綺麗だった。


「あ、でも、好きなところもある」
「はい」
「暑いと、歩くのも遅くなるだろィ?」
「そですね」


すると前を歩く隊長は急に立ち止まった。わたしはよそ見をしていたので顔面から隊長の背中に衝突。


「わ、たいちょ、急に止まらないでくださいよ」
「なまえの横を歩ける時間が増える」


振り返って真面目な顔でそういう隊長をみて、急に全身が暑くなった。


「隊長、今日暑いですね」
「あぁ」
「日陰になる道通って、遠回りして帰りましょうか」
「おう」


真夏日、
新たな恋が生まれました。





20120724



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