「たとえばさ、」
「あ?」
「もしも私がさ、普通の女の子だったらさ」
空のむこう、ずっとむこうで、星がきらりと瞬いた。
「普通な生活おくって、普通の人と、普通に結婚できたのかな」
今日は流星群が見えるからと、夜中の2時に土方さんを連れ出してちかくの河原に来た訳だけど、こんな話をされたらやっぱり不愉快なのかな。
仮にも、それっぽくないけど、私たちは付き合ってる訳だし。
「で?」
「え?」
「言いたい事はそれだけか」
いつもと同じクールな声だけど、この暑い中だとなぜか冷たく感じる。
「うーん……」
「んだよまだ何かあんのかよ」
「うーん」
何が言いたいのかなんて分からない。ただ何となく、自分のやってる事が分からなくなっただけ。
「土方さんはさ、」
「ああ」
「普通の女の子と付き合いたいと思ったことないの」
私みたいに、剣を振るうような人じゃなくて。
私みたいに、人を斬るような女の子じゃなくて。
「どうだろうな」
ちらっと隣を見てみたけれど、土方さんは空をみつめたまま。
「俺は、」
「うん」
「なまえの事、好きだ」
「えっ」
「お前も充分、普通の女だろ」
いまいち納得ができなくて、最後の言葉には返事をしなかった。
「確かにお前は女らしいところなんてねえよ、ひとつも」
「な」
いくらなんでもそれは失礼すぎると私はちょっとむっとしたけれど、土方さんはそんな様子を気にもとめずに続けた。
「男だらけの真選組にいるってのにすっかり馴染んでるし、男みてぇに剣ふりまわしては傷だらけになってそれでも他のやつら守ろうとしたり」
「う…」
「だけどな」
ぽんと頭に手をおかれた。
「お前が一人で泣いてるの、知ってる。いつも頑張って無理して、女として見られたくねぇからってわざわざ男みたいに振舞ってるのも、知ってる」
なぜか視界がぼやける。なんで、なんでだろう。
「泣けよ。我慢すんな、ほら」
土方さんは私の頭をぐっと胸に押し付ける。あまりにも強引で、優しいその行為に、私は泣いた
「俺は、なまえみたいな強くてまっすぐな、普通の女に出会えて、幸せだ」
星に願いを
(どうかこの幸せがずっと続きますように)
私のことをこんなにも理解してくれる人に出会えて、
私はほんとうに幸せです
20110818