屯所の縁側で隣に座るなまえが、急に突拍子もない事を言い出した。
「えっ……?」
「ごめん、ごめんね」
泣きそうなのか、唇をきつく噛んで俯くなまえ。
なんで、なんで?
俺となまえ、付き合ってるんじゃなかったっけ?
そっか。付き合ってたから「別れよう」とか言われるんだ。そっか。
「どうして?俺、なんかした?」
やっぱりなまえは俯いていて、顔なんて見えなくて、小さく震えていて、俺のせいでこんな風にしてしまったと思うと胸が痛んだ。
「もう、」
「え?」
「すきじゃない、ごめん」
泣きたい
泣きそう
涙目な俺、格好悪い
最後の最後に、ごめん
その時、屯所内で一番大きい時計が、昼12時の時を刻んだ。
「さがる、ごめん」
さっきとは比べものにならない明るい声。
おどろいて隣をみると、俺の大好きな、笑ったなまえ。
「今日、何の日か、わかる?」
「今日、今日、……あっ!」
「ごめんね」
悪びれもせず笑うなまえ。
その時、ぎゅっと俺の首に腕を回して、小さく呟いた。
「うそ、大好きだよ、さがる」
君の赤い耳に免じて
仕方ないから許してあげる
20110401
嘘は午後になったらネタばらしなのがお約束