あ、笑った。
なんで笑ってるんだろ、いつも楽しそうだなあ
「………!」
やっぱりかっこいいなあ
すきな人とかいるのかな
「なまえ!」
「ふぉ!?ど、どうしたの妙ちゃん急に」
「さっきからずっと呼んでたわよ。まったく……」
そこまで言うと妙ちゃんは大きくため息をついた。
「いい加減、見てばっかりじゃなくてなにか行動すればどうなの」
「そ、それはちょっと……」
妙ちゃんは今度は大きく舌打ちをした。怖い。わたしは土方くんのほうへちらりと視線を戻す。
うん、かっこいい。
「好きとかじゃないんだって」
「どういうことよ」
「憧れてんの」
「憧れ?」
妙ちゃんは怪訝な顔をして土方くんのほうをみると、どこに憧れるのかわかんないわ、と吐き捨てて自分の席へと帰っていった。結局なんの用事だったんだろう、と思いつつも私の意識は土方くんのまま。
別に好きとかじゃないんだ。剣道してる姿とか、授業中にメガネかけてるところとか、すごいかっこいいなって。こんなかっこいいなんて憧れるなって、それだけであって付き合いたいとかではなくて断じてそれは
そのとき突然、頭の上からその憧れの人の声が降ってきた。
「なまえ?」
「ふぁ!?」
「なんだよ、ふぁって」
土方くんはすこし笑いながら、なにぼうっとしてんだよ、と聞いてきたけれど、わたしは、目も合わさず何でもないよと言うので精一杯だった。
憧れる
(憧れ、のはずだったのに!)な
(あつくなった顔を隠すためにわたしは机に突っ伏して寝たふりをするんだ)