やっぱりアイツは真選組には馴染めねえ。そんな事、誰が見たって分かる事だ。誰も心を開こうとはしない、それどころか会話をしない。訳の分からない噂が流れる。
絶望的だ。
それなのに、みょうじは泣かない。泣かないどころか。なんとも気にしていないような顔。あの余裕はどっからくるんだか。

そんなとき、地方にグループを派遣して攘夷活動を阻止する計画が出た。奥州地方指揮候補は―みょうじ、だった。

「俺は反対だ。出来る訳ねえ」
「何でだ、やってみないとわからないだろう」
「みょうじがいかに馴染めてねえか、近藤さんも見てるだろうが」

近藤さんは譲らない。
そうしたら俺が折れるしかない。来週話すといっていたけど、みょうじを傷つけるだけだって、近藤さんは分かってるんだろうか。



その日の夜だった。
いつもどおり、夜中まで書類整理。その時、何処からとも無く何かの音が聞こえた。何かを振っているような、音。この真夜中に、何だ。ふと襖を開けると、竹刀の先端がちらりと見えたので、素振りをしている事は分かった。

だが、こんな時間に、こんな場所で。そんな奴が屯所内にいるのだろうか。どうしても気になった俺は、相手にばれないように近づいていった。

そこにいたのは、みょうじだった。
相変わらずのきれいな形のきれいな素振り。よくみるとみょうじは、泣いていた。号泣、とかではなく、ドラマの様な、一筋の涙。

俺は、月明かりに照らされ竹刀を振るみょうじを、綺麗だと思った。
泣いている女を綺麗と思ったのは初めてだった。



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