今回の合格者は私一人だったらしい。
「女の子ははじめてだけど……なまえちゃんならきっと大丈夫だよ」
私はそういう近藤さんの言葉を信じるしかなかった。
これからは、ここに住み込み。今は、心配と不安しかない。
私が面識があるのは近藤さんと土方さんだけだし、ほかに知ってる人も、頼れる人も一人もいない。
そうして不安ばかりが募って、とうとう私が入る日になった。
朝、隊士全員が集まったところで、挨拶。この瞬間から私は真選組の隊士となる。
エスサイズでも少し大きい隊服に身を包み、近藤さんと共に大広間の入口の襖の前に立つ。
「大丈夫かい?」
「な、なんとか……」
私がやっとの思いでそう伝えると、まあ大丈夫だよ、と優しく言って、襖を開けた。私も後から続く。
「じゃあ、新入隊士を紹介するぞ。ほら、なまえちゃん」
「みょうじなまえです。よろしくお願いします」
あの時の面接と同じ言葉。
だけど、女である私がそう簡単に受け入れられる訳なかった。
みょうじが自己紹介をした後、やっぱりざわついた。「なんで女が」と言う声も聞こえた。
言わんこっちゃない。
だから俺は女はやめろと言ったんだ。
しかし、確かにあつの剣の腕は確かだった。多分試合に勝てたのは相手との身長差を利用しただけで、本来はそこまで強くないのだと思う。
だが、みょうじの剣道は、しなやかで、綺麗だった。綺麗という言葉が似合う剣道。俺にとっても魅力的だった。
残念な事に、みょうじの剣道を見たのは近藤さんと俺と総悟と山崎だけ。
ほかのヤツらはあいつの事なんて何もしらないはずだ。
どうせ男目当てなんだろ。そんな声も聞こえた。
みょうじは多分聞こえているだろう。
けれど、みょうじは全く表情を崩さず、にこやかに微笑んだままだった。
「なまえちゃんは、1番隊。教育係も総悟に頼む」
「ういーっす」
総悟は適当ながらも了承の返事をしたが、やはり周りの隊士からの反感はやまなかった。