冷えていた。身体の芯まで、心の底まで。僕は、冷えていた。
お金だけはあった。それでも温かかったことは一度も無い。断言しても良い、一度だってない。
僕は、ずっと、寒かった。

「―――さん、―――さん」

楽しそうに僕を呼ぶ君の声だけが初めて、僕を温めてくれたんだ。
綺麗な君、温かい君。
路地裏に倒れていた君を、気まぐれに拾ったのはきっと運命だったんだ。
白い髪の毛に薄赤の瞳。とても稀有な見た目をした君は、誰よりも美しかった。
勿論ひいき目もあるし、彼女の性格も相まってそう見えることも分かっていた。
それでも、彼女は美しかったんだ。

見た目も、心も、全て流水にいつも包まれているかのように、清らかで安らかで、美しくて。

僕はそんな彼女を、愛していた。



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