あたりを見回しながら、横幅の広い階段をおりる。
人が五人程は横に並んで歩けるほどの幅がある階段は、手すりも金色に輝き、装飾品も非常に細かい。
天井を見上げれば天使や森など、ヨーロッパをうかがわせるような絵が描かれている。
それにあわせてシャンデリアも輝いていた。しかし各窓は外から板の様なものが打ちつけられているようで、一際光は入って来ない。
窓を開けようとしたが、シリコンで固められてしまっていた。
太陽の光のかわりに、シャンデリアだけが自分たちの光源を確保してくれている。
あれが落ちたりしたら、きっと真っ暗でわずかにもれる光くらいしかなくなってしまうだろう。
階段を一番下まで降りると、上の廊下にも敷いてあったのと同じ、ふかふかと足を包み込むように柔らかいカーペットがまっていた。
足を降ろすと、靴底が半ばまで沈んでしまう。普段は堅いフローリングの上で生活しているために、その感触に慣れずに思わず驚いてしまう。
他の三人をみると、ホシダも周りを観察しつつ驚き、ホッタとハヤサカは少し怯えるように身を寄せ合いながらフルギの後について来ていた。
階段の先、そのまままっすぐ。そこには大きな両開きの扉があった。
非常に重そうな、こげ茶色の木で作られた扉もまた金色の装飾がされ、かなり豪奢だ。
一体どこの金持ちの屋敷なのだろうか、自分にも分けて欲しいと思わず貧乏人の感想が浮かぶ。
扉、開いているのだろうか。都合よく開いていれば万々歳、外は森のようだから屋敷の中をもう少し探索して準備を整えてから脱出すればいい。
どきどきしながら扉に手をかけ、引っ張る。ビクともしない。押す。
扉はなんの動きも見せることはなかった。扉はあまりにもしっかりとしていて、少し強い力で押したり引いたりしても、微動だにもしない。ホシダと協力してさえ、それは同じだった。

「ダメ、ですね」
「そうみたいですね…やっぱりそう都合よくはいかないか」

扉は背が高く、見上げるようにして見つめる。思わずため息が出た。これでここから出ることは出来ないことがはっきりとした。
それならば他の出口を探さなければいけない。他三人からの視線が突き刺さっているような気がして、何故自分が主導しなければならないんだと半ば八つ当たりするような気分にもなった。

「…ん?なんでしょう、これ」

その時、ハヤサカが屈んで一つの紙を取り上げた。
扉の傍に落ちていたもので、もしかしたら扉を開けようとしているときに落ちたのかもしれない。
そこには、またもや百合の絵が薄く便箋に、パソコンで打った文字が記されていた。

『あと六人』

その言葉は、部屋に置いてあった封筒の言葉を彷彿とさせる。
それは他の三人も同じだったようで、お互い目を見合わせた。
……あと、六人。それから、ここから出られるのは一人だけ、という言葉。
意味は測りかねる。あと六人とはどういうことなのか、あと六人存在するということ?それともあと六人に何かがおこるということなのか。
とにかく、今ここにいるのは三人だけ。きっとどんな状態にしろ、あと三人はこの屋敷の中にいるのだと思う。

「捜しましょう、多分、他にも人はいる」

落ちていた紙を折りたたんでポケットに仕舞い、三人につぎに目指す場所を指差して示した。




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