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――今宵、月が満ちる。


朝からどこか上の空な土方を心配した真選組局長、近藤は土方に休暇をとらせることにした。

「トシ…お前、俺達に隠してる事があるだろう」

近藤は真剣な眼で土方を見つめていた。


―近藤さんは、多分俺達の事を知っているんだろう。

「なぁ、近藤さん…俺はどうすればいい?」

土方は俯いていて近藤からは表情が見えない。
だが、彼はわずかに震える声で呟いた。

「大切なモンの守り方なんて、知らねぇんだ…」

今まで組の為、近藤の為にと剣を奮ってきた土方は、繊細で崩れ易いものを守る術など持っていなかった。






――今宵、月が満ちる



「晋助、拙者達を、鬼兵隊を、捨てるつもりか」

河上の声が静かな部屋に響く。感情の無い、それでいてどこか諦めたようにも聞こえる声。

「晋助はそれで満足なのでござるか?」

高杉は河上の考えが読めない。

「…てめェには関係ねぇ。」

「…そうでごさるな。だが…」

「…っ!?」

河上は高杉の腹を殴り、気絶させて抱え、船を降りた。

「拙者は晋助には幸せになってほしい」







「トシ、今日は満月だ。」

―行くんだろう?

近藤は土方の背中を押した。
真選組局長としてではなく、
一人の友人として。

「っ近藤さん!俺はッ…」

土方は食い下がる。



「副長、高杉が待ってるんですよ。」

音も無く現れた山崎は言う。


「河上から言伝も預かってるんです。『晋助は主と共に生きる覚悟ができている。それは主とて変わりはないはず』と。」

淡々と、けれど少しだけ悲しみの色が滲む声で言伝を述べた。

「覚悟…」


「トシ、行ってこい。」

「副長、行くべきです。」

二人に背中を押され、土方は決意を固めた。

「あぁ、行ってくる。じゃあな、近藤さん、じゃあな、山崎」






月は満ち、
二人が揃い、路が重なる



「高杉、俺は覚悟を決めた。
お前と、共に歩んで行く。」

真っ直ぐに、偽る事無く、
高杉を見据えた。

「覚悟なんかじゃねぇ。
俺はお前に誓う。」






ちた。
 
いくら月が欠けようと、
俺達の誓いが覆る事は無い。
 
 
 
 
 
 
小雪様リクエストで高杉→←土方←山崎でした。
リクエストありがとうございました!
私なりに解釈して書いたものですが、気に入って頂けましたか…?
若干山崎片想い要素が薄い気が…
高杉が気絶する程腹を殴る万斉って…
感想頂けたら嬉しいです!補足:3と4は時間軸的に言うと、4で万斉が高杉を連れ出す→3で高杉が土方を待つ→4で土方が来る。
です。

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