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真選組の為、そして近藤さんの為、そう自分に言い聞かせて始めた高杉との交際。
今、これを仕事でしかないと言える自信が無い。

「…情けねぇな」

最初は確かに組のための仕事だった。
鬼兵隊の情報を探り出したら終わらせる。場合によっては斬り捨てるつもりでいた。

だが奴は違った。
本気で俺を手に入れようとしていた。俺はそれに見事に落ちちまった訳だ。
真選組は俺の全てだった。なのに今更他に大事なモンが出来ちまった。
それも指名手配犯と幕府側の人間、ましてや男同士。
認めてもらえるなんて思えない。
周りにバレるのも時間の問題だろう。
俺はどうすればいい?
何を捨てなきゃならない?

「…とんだヘタレだ」

自嘲して窓の外を眺める。
月を眺めていて考えるのは
やはりあの男のこと。
月だけじやない。
仕事でも、稽古でも、
何をしても考えるのはあいつのこと。

同時に、組の連中や、近藤さんの顔が頭に浮かぶ。

裏切りたくない。

だがこの気持ちの抑え方も知らない。
否、知っていたとしても俺にはできないのだろう。


「なぁ、高杉…俺は弱いよ」


こんなにも、弱いんだ。





月はまだ満ちていない。




静かに、俺を見下ろしていた。





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