>> 1 真選組の為、そして近藤さんの為、そう自分に言い聞かせて始めた高杉との交際。 今、これを仕事でしかないと言える自信が無い。 「…情けねぇな」 最初は確かに組のための仕事だった。 鬼兵隊の情報を探り出したら終わらせる。場合によっては斬り捨てるつもりでいた。 だが奴は違った。 本気で俺を手に入れようとしていた。俺はそれに見事に落ちちまった訳だ。 真選組は俺の全てだった。なのに今更他に大事なモンが出来ちまった。 それも指名手配犯と幕府側の人間、ましてや男同士。 認めてもらえるなんて思えない。 周りにバレるのも時間の問題だろう。 俺はどうすればいい? 何を捨てなきゃならない? 「…とんだヘタレだ」 自嘲して窓の外を眺める。 月を眺めていて考えるのは やはりあの男のこと。 月だけじやない。 仕事でも、稽古でも、 何をしても考えるのはあいつのこと。 同時に、組の連中や、近藤さんの顔が頭に浮かぶ。 裏切りたくない。 だがこの気持ちの抑え方も知らない。 否、知っていたとしても俺にはできないのだろう。 「なぁ、高杉…俺は弱いよ」 こんなにも、弱いんだ。 月はまだ満ちていない。 静かに、俺を見下ろしていた。 |