>> 曇天

万高



めんどくせー。
隣にいる晋助がぽつりと呟いた。
同じく拙者も暗く淀んだ空を見上げて、

「嗚呼、そうでござるな。」

呟いた。


−曇天−

午後の授業をサボり晋助と屋上に出た。
空は灰色で雨が降りそうだ。
グラウンドからはサッカーをする生徒の声がしている。

「…ライター持ってるか?」

晋助が煙草をくわえながら聞いてきた。
持ってないのか。
ポケットからライターを出し火を付けてやった。

「……」

「……」

それから何をするでも無く嫌な音をたてて軋むフェンスに寄り掛かり空を見つめる。

「なぁ…どうする?」

…どうすると言われても、何の事なのだか分からない。

「何をだ?」

「俺達の事。」

晋助と拙者は恋人という関係にある。
…恋人とは少し違う気もするが。
所謂性欲処理とかそんなかんじだろう。
今まで何も考えていなかったが…晋助は別れたいのだろうか。

「…別れるか?」

「……。」

晋助からの返答はない。
晋助の煙草はもう短くなって、地面に落として靴で揉み消した。

「お前はどうなんだよ」

煙草に向けられていた視線も今はこちらに向いていて、返答に困った。

「別に拙者は晋助が良ければ今のままでも構わぬと思うのだが…」

自分でもよく分からなかった。

晋助が好きなのかと言われれば好きだ。
だが拒絶されれば強要する程でもないと言ったところだ。

「…あっそ。」


自分で聞いておいてこの返事はいかがなものか。…まぁ良い。

「めんどくせー。」

どんよりと重くなった雲からはそろそろ雨が降るだろう。
そして晋助が呟いた本日二度目の言葉に拙者も

「嗚呼、そうでござるな。」


呟いた。





僕等の心をうつしだしたような空






(万斉、お前鈍い。)(…?何の事だ?)



煮え切らない二人。




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