>> 記憶フィルム 土山 過去捏造 「俺、記憶って何度も再生してるうちに擦り切れて、いつかは思い出せなくなっちまうんじゃないかと思うんです、」 久々に二人の休暇が重なって、存分に体を繋げたあと、俺の腕の中で山崎が呟いた。 「は?」 こいつはたまによく分からない事を言う。 普段は然程気にならないそれが、今は少しだけ寂しく感じた。 「ほら、ビデオって何度も再生するとフィルムが伸びたりするじゃないですか」 伏せられた目に俺は映っていない。 艶やかな黒髪に指を通しながら黙って山崎の話を聞く。 「それで俺、小さい頃の記憶が無いんです。小さい頃の、というか母親のことなんですけど」 多分、辛いことがあった時に、幸せな記憶を再生しすぎちゃったんだと思うんですよ。 そう言って山崎は笑う。 辛いこと、とはきっと母親を亡くしてからの、父親による理不尽の数々。 関係を持つ時に、山崎が語ってくれた、きっと、まだ誰かに見せるには治りかけであまりにも痛々しい過去。 「だから、俺は思い出ってのが怖いんです、いつか無くなるなら、思い出にしたくない。思い出さなくていい。」 そう言った山崎の肩は小さく頼りなく見えて、こいつを幸せで満たしてやりたいと思った。 そんな事を言えば、こいつは俺をロマンチストだと笑うかもしれない。 それでも、それでこいつが笑えるのなら、存外悪くない気がした。 「なら、思い出す暇もないぐらい俺がずっとそばに居てやる」 山崎はやっと俺を見た。 その瞳には戸惑いの色が浮かんでいて、不安と期待が入り交じったように揺れていた。 「思い出なんかに頼らず俺を信じればいい。俺は無くなったりしねぇよ」 「…随分強気ですね。アンタが俺の全てだって言ってるみたいじゃ…」 突き放すような物言いが照れ隠しだっていうのは分かっている。 だから最後まで言わせてやらない。 辛い時だって何だって、 俺が全力で受け止めてやるよ そう囁くのは もう少し後でもいいだろう 題名のセンスが皆無で申し訳ない。 しかも久々の更新です。 銀魂は特にそうですね。 今年も頑張ります |