>> 届けようとも思わない、

土山土

流血



脇腹が焼けるように熱い。
腹の一部分が吹き飛んでいて、内臓だって全部収まっているのかどうか怪しいし、振り返れば見たくもない肉片やら何やらが落ちているかも知れない。

第一もう振り返るだけの気力も残っちゃいないのだけれども。まぁ兎に角あとは死に呑まれるのを待つだけ。なぜ自分がこんなに冷静なのかは分からない。が、


とにかく死ぬまえに考えることはたくさんあるのだ。死ぬまでの暇潰しとでも思えばいい。死ぬまでの、というのも変な話だが。

俺が死んだら、局長の肩は誰が揉むのか、誰が沖田隊長とサボって団子屋に行くのか。


誰が、副長の傍に居るのだろうか。


副長の煙草とマヨを切らさないようにして、副長の理不尽な暴力に耐えて、それから、それから


あの人は仕事に集中すると寝なかったり、食事を抜いたりするから…
体を気遣って…


あー俺、副長のことばっかりだ…


―ザキはトシのことばっかりだなぁ!

そうですよ局長。
あの人は俺がいないとまともに生活できないんですから

―山崎は馬鹿でィ。あんなやつ放っておきゃいいのに。

たしかに俺は馬鹿ですね
だけどあれでも結構楽しんでたんですよ



そうだ、なんだかんだ言って楽しんでたんだ。殴られるけど、時々褒めてくれたりするし、意外に優しかったりするんだ。


だから、俺は副長の側にいた。
鬼などと畏怖されてはいるが、
あの人は酷く脆くて繊細だから。



俺は副長の為なら命さえ惜しまない。
現に今、こうして死にかけている。


なんでそこまで尽くすのかって?




それは…


















届かなかった恋心



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