>> 迷える嘘つきな子羊たち

土山



俺はあいつが嫌いだ。何を考えているか分からないから。それは高校生の時から同じで、あいつはクラスでも浮いた存在だった。

あいつには自傷癖がある。
何故だかは俺は知らない。それも俺があいつを嫌いな理由のひとつだ。自分を傷つけても俺には何も言わない。

付き合っているのに。
俺はなんだ?都合のいいセフレか?同棲までしていて、肌も合わせるのにあいつは俺に何も言わずに傷を増やす。

そもそも俺があいつと付き合っている理由というのは、至極簡単なもので、若気の至りとでも言うのか。興味本意だった。当時、クラスになじめずにいても気にせずに奇行を繰り返していたあいつに俺から声を掛けた。


当時俺はあいつを変なヤツ、としか認識していなかった。俺はそれなりにモテたし、友達もいた。ひとりでいるあいつになんとなく興味を持ってなんとなく話しかけた。

意外にもあいつは俺に懐いて、俺はおもしろがって相手をしてやっていた。
話しかけたのが高2で、付き合うようになったのが高3。

それだってなんとなく流れでそうなったのだから驚きだ。女にモテないわけじゃないのに俺がなぜあいつと付き合ったのかは今でも謎で、それは高校を卒業した今でも続いている。同棲というなんともいえないかたちで。

最初はそれなりにうまくやっていた。
話をすれば意外と普通だし、セックスの時は気持ちよさそうで、すこし可愛かった。

俺はこのまま恋人としてやっていってもいいような気さえしていた。だがそれは初めのうちだけだった。もともと俺達は好きあって付き合い始めたわけじゃない。

それは後になって大きな綻びを生む。好きなところよりもそうでないところの方が多いのだから当たり前だ。少なくとも俺はそうだった。

だから浮気だってしたし、あいつに辛くあたることもあった。あいつが自分を傷付けるようになったこの時からかも知れない。

あいつは嘘つきで、嘘をつくのが上手かった。傷だって、他人からは絶対に見えないところにつけるし、そんな様子は全く見せなかった。

俺があいつを殴ってもへらへらと笑っていたし、浮気しているのを知っていてなにも言わなかった。


だから気がつかなかった。
あいつが俺のことを想っていたこと、
それと、
俺もあいつが好きだったこと。

あいつの態度に苛ついたのは
たぶんあいつの意識が俺に向いていないように感じて、俺を見てほしかったから。

思えばそれはひどく幼くて稚拙な思考だった。自分を見てほしくて傷つけて、それでも自分は傷つかないように嫌ったふりをしていたんだから。



なぁ、俺はやっと気づいた

お前が好きだよ


だから、
































迷える嘘つきな子羊たち





(いつかは辿り着けるのだろうか。)







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