>> El da de la despedida. 土山 「俺、東京行くことにした。」 付き合って1年ちょい、正直ここまで続いたのは奇跡だと思った。 もともとこっちの我が儘で付き合い始めたようなものだ。 優しい彼の心に付け込んで、縋るなんて事はしないで、それを悟られないように。 面倒な奴だと思われるのが嫌だから。 それは別れる時にだっていえることだ。 「いままで、ありがとうございました」 女みたいに縋るなんてしない。 潔く、物分かりのいい奴でいたい。 「……、あぁ」 でも、少しくらい、最後くらい… 女々しく泣きわめいてもいいですか? 本当に好きだったんです。 俺は別れたくないです。 俺を置いて行かないで。 こんな言葉しか出てこない。 言えば捨てないでくれるだろうか。 また彼の優しさに取り入れば別れないですむのではないのか。 遠くなる背中を見て自然と涙が零れた。 同時に足が勝手に動きだした。 あの人を追いかけて、 聞きたいことがある。 「土方さん…!」 いままでで1番速く走ったかもしれない。 「ひとつ、聞きたいことが、あるんです」 聞いておかないと後悔する気がして。 「俺のこと、一瞬でも好きでしたか…?」 あぁ、また涙が溢れてきた。 「こんな俺を好きでいてくれましたか?」 土方さんは一瞬だけ目を見開いたけど、 すぐに優しげに微笑んだ。 「あぁ、好きだった。」 ―――いままでも。これからも。 土方さんと別れたあと、 ひとり見上げた空は澄んでいて、 彼との別れにぴったりだと思った。 El da de la despedida.:別れの日 タイトル:ad maiora!様 |