>> さよならエイチツーオー 佐政 佐助は、泣いていた。 正確には、ちがうのだけど、おれには、泣いているように見えたのだ。 泣きそうに顔を歪めて、何も言わないまま、消えた。きれいに、あるべき場所から消え去ってしまったのだ。 真田に聞いても、小十郎に聞いても、何も教えてくれなかった。 アパートに居ても帰ってこないし、荷物もない。 始めから居なかったみたいだ。 佐助がほんとに居たのかもわからない。 零れた水みたいに、蒸発してしまった。 消えてしまった後では、そこに本当に存在していたのかも分からない。 考えていると おれの左目からも涙がながれた。 さよならエイチツーオー |