「はぁい、骸ちゃん」

「おや、M・Mではないですか。これは珍しい。」

「久しぶりね、骸ちゃん!」

「今は依頼などありませんよ」

「そうなのよねぇ、最近、暇で困っちゃうわ。」

「だったら、さっさと消えろっつーの」

「煩いわよ、イヌ」

「イヌじゃねーびょん!!」

「……、…で、何しに来たの」

「相変わらずもっさりしてるわね、あんた」

「………」

「まぁ、いいわ、教えてあげる。ビジネスのために来たのよ!」



ふんっと胸を張ってビジネスと言ったM・M。
その手には小さな箱を持っている。

骸様は特に興味をそそられていないようで安心した。
骸様が乗り気だと絶対にめんどい事態になるから。



「すみませんが興味ありませんね、他を当たってください」

「雲雀由夜」

「……!」

「何れ、お前が知ってるんだびょん!あっ!そういや、劇の時…」

「そう、チェック済みよ。骸ちゃんの想い人なのよね」

「彼女に何かするのであれば容赦はしません」

「キャハハ、怖い顔!そんな事しないわよ。命あってのお金でしょう、今日は骸ちゃんにいいものを持ってきたの。」

「…その箱の事ですか」

「えぇ、中身はクッキーにしてみたわ」

「そこらで売ってるクッキーと変わりないようですが?」

「見かけわね。ただ、これには…」

「それには?」

「惚れ薬が入っているのよ」

「……!」

「偶然、手に入れたんだけど任務の予定もないし使い道がなくてね。」

「……」

「どうせだったら骸ちゃんで試……、有効に使ってもらおうかと思って来たのよ」



…嫌な予感。
由夜に手を出すなら容赦はしないとピリピリしたオーラを発していた骸様。
今、横顔を見るとごくりと喉を鳴らしていた。
邪な事を考えているのは一目瞭然。

きっと、買うか買わないか欲望となけなしの理性が戦っているに違いない。

……欲望の圧勝じゃないだろうか。



「骸様」

「……何ですか、千種」

「骸様、まさか購入……」

「だめれすよ!こんな女が売り付けるものなんて絶対、何かありますって!!」

「骸様、いくらなんでも…」

「分かっていますよ。M・M、すみませんが……」

「あら?本当にいいの?」

「……」

「一時的なものなのよ、もちろん身体には何の悪影響を及ぼさない。」

「………」

「見たくないかしらー?ツンツンしてる彼女が骸ちゃん"だけ"にデレデレしちゃうと、こ、ろ」

「…ー…!!」

「骸様」

「く…っ、その手には乗りませんよ、M・M…!!」

「そうなの?」

「えぇ、そんなクッキー、僕には必要ありません」

「それじゃ、このクッキーは並盛の奴に売ろうかしら」

「な…!!」

「例えば、そうね……、雲雀恭弥とか…?」

「……ッ」



あぁ、これはだめだな、と思った時には、もう遅い。
M・Mは気分よく滞在してるホテルへと帰って行き、骸様はクッキーを手にしてしまった。

明日、何事もありませんようにと冷めた目でオレ達は骸様を見つめた。



「骸様、そのクッキー…」

「言っておきますが、他の者に渡っては危険だと純粋に思い購入しただけです」

「骸さんが手にするのが一番、危険らと思いまーす」

「私もそう思う…」

「オレも………」

「失礼ですね、まったく」


***


「さて、問題は由夜にどうやってクッキーを食べさせるかです」

「骸さん、惚れ薬の効果を試す気満々れすねー…」

「当たり前でしょう。せっかくのチャンスですから。」

「………」

「由夜には申し訳ありませんが一度くらいデレデレと甘える所を見たいんです…!!」

「……」

「この機会を逃したら、この先の人生にチャンスがあるか分からないじゃないですか…!!」



朝の教室で作戦をたてる骸様。
由夜はあまり甘いものを食べないって言ってたからクッキーを食べるとは思わない。
…骸様がしつこく食べろと勧めるなら、なおさら警戒するだろうしね。

だけど万が一、食べてしまったらどうしよう。

M・Mが言うにはクッキーを食べて最初に見た人物に一時的に惚れてしまうらしい。
とにかく甘い雰囲気になること間違いなし、だとか。

……なんて危険アイテムを骸様に売り付けてしまったんだ、M・M。



『……早いわね、骸達』

「……!」

「あ…、由夜、おはよう…」

『おはよう、クローム』

「んぁー、来ちゃったびょん」

「……」

「…由夜」

『来ちゃ悪い訳?…って骸、朝からなに?』

「由夜、小腹が空きませんか?」

『は…?』



…直球すぎじゃありませんか、骸様。
由夜は骸様が手にしているクッキーを見た後、オレを見て面倒な様子でため息を零した。



『千種君、どういうこと?』

「オレは、その…」

「……」



疑わしげに見つめる由夜に何も話すなとオレに無言の圧力をかける骸様。
あぁ、由夜には悪いけどめんどい。
心の底からめんどい。

もし身の危険があったなら、その時はちゃんと止めるから許して欲しい。

だから、今は……



「知らない。いつものこと…」

「少々、引っ掛かる言い方ですね、千種」

「……」

『そりゃ、いつも変と言えば変だけど…』

「由夜まで何を言いますか。お詫びにこのクッキーを食べてください」

『ちょっ、何よ…っ』

「美味しいですから、ほら、口を開けて……」

『骸が食べればいいじゃない』

「僕が食べたとしたら何一つ変わらないですからね」

『変わる…?』

「いえ、こちらの話です」

『……』



クッキー片手にじりじりと迫る骸様。
由夜は呆れたような表情。



『食べれば静かにする…?一枚くらいなら…』

「それはもちろん…!」

「え…」

「ゲ……ッ」

「あ……」

『どうしたのよ、千種君、犬、クローム』

「ふ、太るからやめた方がいいびょん!」

『たかがクッキー一枚で太る訳ないでしょ』

「ねぇ、由夜、甘いもの…」

「苦手だったんじゃないの?」

『あまり食べないけど骸が煩いから』



骸様からクッキーを受け取る由夜がクッキーを口に運ぶ。
うきうきとした骸様にハラハラと見守るオレ達。
妙に緊張してしまう。

そんな中、由夜は…



▼クッキーを食べた
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※骸視点

▼クッキーを食べなかった
4ページへ
※由夜視点


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