十二月二十四日。寒い寒い冬の朝。 冬に限らずに朝は苦手なんだけど、冬の朝は少しだけ好き。 ぬくぬくしたベッドが気持ちいいんだもの。 冬休みだし、もう少し眠っていたい。 起きなきゃ。 だけどもう少し。 こういう時間が一番、心地良い。 ≪ユウヤッユウヤッオキテッ≫ 『ヒバ…ード……もうちょっ…と…』 ≪オキテッ≫ 耳元でのヒバードの声がする。 ふわふわとしたヒバードの羽が頬に当たり少しくすぐったい。 ≪ジングルベール、ジングルベール♪≫ 『……ヒバード、その歌、何で知ってるの?』 ≪ヒバリッオシエテクレタッ≫ 『そ、そう……』 恭兄がジングルベルを歌う姿なんて想像つかないんだけど。 顔に似合わずクリスマスを楽しんでいるのか。 ≪オキテッオキテッ≫ 『………』 ≪ユウヤッユウヤッ≫ 『ん……』 クリっとした目で首を傾げてジッと見つめるヒバード。 あぁ、もう、そんな目で見ないで。 じーっと見つめられてはだめ。 これは私の負けだ。 『わかった、起きるよ…』 ≪……!≫ 私が起きるとヒバードは嬉しそうにパタパタと部屋中を飛び回る。 その様子を見て、ふ、と微笑して着替える。 そして恭兄がいるであろうリビングへ向かった。 まだ、ぼーっとしている私を見て恭兄は口角を上げるとコーヒーを飲む。 「ヒバード、由夜を起こしてくれたんだね」 ≪オコシタッオコシタッ≫ 『恭兄、おはよう…』 「おはよう、由夜」 『ん……』 「ワォ、まだ眠そうだね」 『眠いよ……』 「遅くまで本を読んでるからだよ。…あぁ、そうだ、由夜」 『何…』 「欲しい物あるかい?」 『いきなり、何なの?』 「クリスマスプレゼント、何がいいかなと思ってね」 『……特に欲しいものない』 本当に思い付かないから、そう答えただけなのに恭兄は眉をしかめて私を見ている。 「それじゃ、僕に任せてくれる?」 『いらないってば』 「………」 『……』 寂しそうにため息を吐いて、私に視線を送る恭兄。 何よ、そのセコい同情作戦は。 『…そんな目で見ても、いらない物はいらない』 「………」 『……』 微妙な沈黙が続くけれど、それを破ったのはヒバード。 ぽふっと恭兄の頭へと乗り、先ほどのように首を傾げて私を見つめる。 「どうしても、だめかい…?」 ≪ダメッ?ダメッ!?≫ 『………』 ≪ダメッ!?≫ 『……う』 *** 「由夜、これはどうだい?似合うよ」 『………』 恭兄に負けた。 正しくはヒバードのお願いに負けた私は何故かジュエリーショップへ。 恭兄は真剣に指輪を選んでは私の左手の薬指へはめる。 何で薬指にはめるの、というのはあえてツッコミしない。 『ねぇ、恭兄…』 「なに?」 『恭兄さ、彼女とかいない訳……?』 「由夜がいればいいよ」 『………』 「……」 『じゃあ、さ…』 「なんだい」 『好きな人とかいないの?』 「ワォ、やきもちかい」 『……』 ダメだ、何か微妙に話が噛み合わない。 むしろ噛み合わす気なんてサラサラないでしょ、恭兄。 「由夜、これはどう?」 『……うん、シンプルだし、それがいい』 「気に入った?」 『…うん、ありがと』 「これくらいしないとね」 『本当なら恋人に贈るものだと思うけど』 「何か言ったかい」 『何でもない』 ツッコミを入れるのに疲れた私は恭兄が選んだ青の石で装飾された指輪に決めた。 私の趣味が分かっているのかシンプルで、だけど綺麗な指輪。 「さぁ、この後は食事にでも行……」 恭兄は言葉を詰まらせる。 ふと顔を見れば酷く不愉快そう。 私の後ろに何かあるのか。 振り向こうとした時、恭兄は低く小さな声で私を止めた。 |