私と恭兄は夏の暑さを凌ぐため別荘へとやって来た。

恭兄は、さっそく周辺の群れを咬み殺しに出かけていった。
私は泳ぐつもりはないけど何故か恭兄が用意していた水着にグレーのパーカーを羽織ってのんびりと読書を予定していた。

だけど予定は未定だとよく言ったもの。



『……』



黒曜から離れているのに、なのに何でここに骸がいるのか、暑苦しい事この上ない。



「……やはり愛の糸で結ばれているんでしょうね」

『仮にそうだとしたら今すぐ切ってあげる』

「安心してください。切っても切れません」

『……、何でここにいるのよ』

「犬が海に行きたいと言うので来たんです」

『犬?』

「えぇ、ほら。あちらにいます。」



海を見ると犬が泳いでいる姿。
足が浸かるぐらいの浅瀬に千種君がぼーとして立っていて、カラフルなパラソルの下にはクロームらしき影が見えた。

千種君、クロームに犬。
海で散歩してる飼い主とイヌみたいだ。



「由夜は今、この作家の本を読んでいるのですか」

『そうだけど、何?』

「意外とクフフなシーンありますよね、これ」

『………』

「おや、何か期待しているんですか、由夜」

『期待なんてしてないわよ、警戒してるのよ…!!』

「………」

『な、何よ…、ジッと見て。』

「そのパーカーの下はもしかして水着だったりします?」

『そうだけど。…悪い?』

「悪いですよ、脱いではいけません」

『……は?』

「由夜の肌がそこらの馬鹿共に見られるかと思うと気が気じゃありません。ですから絶対に脱がないでくださいね。」

『………』

「おや、どうしたんですか?」

『いや、骸の事だから脱げとか言うのかと思って』

「あぁ、そういう事でしたか。もちろん僕の前でしたら構いませんよ。何でしたら今すぐにでも二人でもっと熱くなりましょうか」

「咬み殺す」

「な……っ!?」

『あ……』

「…ー…ッ!!」

「ワォ、隙だらけなんて珍しいじゃないか、六道骸」

『恭兄………』

「由夜、一人にさせて悪かったね」

『別に大丈夫だったけど…』

「まさか、こいつがこんな所までストーカーして来るとは思ってもみなかったよ」



恭兄は冷ややかな目線で気絶した骸を足蹴にしている。
あ……、ちょっと涼しくなってきた。

ふっと笑って骸を見下すと恭兄は何を思ったのか、骸の髪、皆にナッポーと呼ばれる部分を鷲づかみして引きずりだした。



「………」

『恭兄、どうする気?……海に捨ててくるとか?』

「ワォ。僕がそんな事するとでも?」

『十中八九すると思う。』

「そうかい?僕としてはこのまま海に沈めるのも並盛はおろか黒曜の平和のためだと思うけど、それじゃ甘いよ」

『……甘い?』

「あぁ、六道骸とは色々とあってね。敗北よりも屈辱的な目にあわせたいんだ」



うわ、恭兄から冷たくドス黒いオーラが……!!

こういう時の恭兄には絶対に逆らわない方がいい。
苛々が最高潮の時だからね。



『……で?どうするの?』

「この近くにさ、パイナップル畑……見つけたんだ。」

『パイナップル畑…?何でこんな所に…』

「さぁ、知らない。でも、丁度いいだろ」

『何が丁度いいの?』

「植えてこようかと思って。」

『………』

「……」

『………行ってらっしゃい』



そう言い残して恭兄はパイナップル畑へと骸を埋めに行った。

…骸と恭兄、何があったんだろう。
まぁ、どうでもいいけど、これでしばらくはのんびり出来る。

さすがにパイナップル畑で放置するのは可哀相な気がするから恭兄に見つからないように掘り返しに行ってあげるとして、今は犬達の所に行ってこよう。



『クローム……』

「あ、由夜……」

「んぁー、お前も来てたのか」

『まぁね』

「なぁなぁ!皆でビーチバレーしようぜ!」

「めんどい」

「二対二に分かれて勝負ら!!」

「…めんどい」

「柿ピー、少しはやる気だせよ!」

『私、クロームと組むから』

「私と?いいの…?」

『もちろん。』



こうやって遊ぶのも悪くない。
初めての騒がしい夏休み。

思い出が一つずつ増えていく。



end



2007/07/05
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