「と言うことで、由夜。セリフが決まったので……と、おや?」

「由夜なら今さっき、教室を出て行きました」

「鞄を持ってったから帰ったんじゃないれすか?」

「……犬、それをどうして早く言わないんですか。」

「ちょっ、待ってくらさい!何でオレだけ怒られるんれすか!」

「細かい事は気にしないでください、犬。さぁ、あの果実の刑としましょう…」

「骸様、はさみです」

「ぎゃん、ま、またナッポーの刑れすか!?」

「………果実の名を言った罪は重いですよ、犬」

「なっ!ナッポーですよ、ナッポー!パイナッポーとは言ってないれす!」

「今、言ったじゃないですか。ねぇ、千種?」

「えぇ、はっきりと果実の名を言いました…」

「明らか誘導尋問れすよ!今のは!つーか!何れ柿ピーは安全なポジションにいるんらーっ!ダメガネーっ!」

「…骸様、やっちゃってください」

「えぇ、もちろん問答無用です」



チョキ チョキ チョキ クフフ チョキ チョキ バサッ



「ぎゃーんっ!!せっかく髪が伸びたのにひどいれすー!!」

「クフフ…クハハハハ……ッ!!」


***


『ここが、並盛中…。やっと着いた。』



校門前で立ち止まり並盛中を見上げる。
並中生は帰り始めていて黒曜生である私は目立ってしまっている。
視線に苛々する、早く恭兄のところに行こう。

恭兄がいつもいる所は、応接室だったっけ?
私は来客用のスリッパを履き校舎の中へと入った。



『…確か、こっちだったはず』



以前に恭兄に連れて来られた事はあるけれど記憶に薄い。
うろ覚えの自分の記憶を頼りに歩いていると、まだ校内に残ってる並中徒がチラチラと私を見る。



『……』



その視線は苛々するけど他校生が校内にいるんだから不思議そうに見られるのは仕方ない。

黒曜と並盛。
確か以前に何か問題があったしね。
その時は恭兄もボロボロになって小鳥と一緒に帰って来たっけ。

あの時は一体、何があったんだか。
そんな事をぼんやりと考えながら階段を上がると私の視界を遮ったのは子牛。



『な……!!』

「ガハハッ、これはランボさんのだもんねーっ」

「待ちやがれっ、アホ牛!それは十代目の…っ」

「ひぃぃ!!そんな点数のテスト持って逃げるな、ランボーッ!!」



子牛…、訂正、牛柄の洋服を着た子供は前を見ずに、こちらに走ってくる。
その子供の後ろにはダイナマイトを構える銀髪の男子。
ダイナマイトに火をつけると、子供に向かって容赦なく投げた。

そのダイナマイトは必然的に子供の後ろにいる私にも投げられている状態。



『……っ』

「ちょっ、獄寺君っ!ランボの後ろに女の子が!」

「え……」

『…ー…!』



ドン、ドォンと激しい爆発音に耳が痛む。
子供を放って置く訳にもいかず、私は子供を抱えて恭兄のトンファーで爆風を受け流す。

爆発が止むと煙の向こうから気弱そうな男子が駆け寄って来た。



「だっ、大丈夫ですかっ!?」

「獄寺、校内で花火はやり過ぎだって!悪かったのな、怪我はねぇか?」

『……別に。大丈夫。』

「なら、よかった…、って!黒曜生!?しかもトンファー!?」

『……?』

「てめぇ、まさか十代目を狙って…っ」

「まーまー、獄寺!落ち着けって!」



話しかけてきた気弱そうな男子は私の姿を見るなり青ざめる。
それと同時に銀髪の男子は再びダイナマイトを構える。

黒髪の男子が止めても聞かず銀髪の男子は私に威嚇をしてくる。

…煩いな、まったく。
そう思うと自然にため息が出てしまった。



「う、ぐ、ぴゃ……」

『泣かないでよ…』

「うぅ、ランボさん悪くないんだもんねー!!」

『分かったから。』

「ぐ、ぴゃぁぁ!」

『ねぇ、早くこの子を引き取ってよ』

「は、はいぃぃ!」



抱きかかえていた子供を気弱そうな男子に渡そうとする。
だけど、泣き喚いて私の胸に抱きつき離れようとしない。

…どうすればいいのよ、この子。
子供の扱いなんて分からないから焦ってしまう。



『………』

「こ、こら!ランボ!離れろって!」

『……』

「おい!ランボってば!!」

『はぁ……』

「ひぃぃ!すみません…!!い、今すぐ…っ!」

『別に怒ってる訳じゃない。』

「ちゃおっス、由夜」

『……?』



ふと、下から私を呼ぶ声。
足元を見ると、そこには真っ黒なスーツに身を包んだ小さな赤ん坊が立っていた。



『……何で名前』

「知ってるぞ、お前。骸にストーカーされてんだろ」

『え……』

「変態には困ったもんだな」



ニッと不敵に微笑む赤ん坊。
後ろの男子達は骸の名前を聞いて顔が青ざめていたり怒りを表していたり、きょとんとしていたり反応は様々。

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