***


その後、皆でゲームをして盛り上がる。

恭兄は風紀委員の仕事で他の花見会場へと向かった。
花見で浮かれてる人達から集金するためらしい。

私を心配していたけれど、背中を押せば恭兄は渋々、この場を離れて行った。
今頃、群れを狩っていることだろう。



「骸さーん、これ、食べないならオレが食っていいれすか〜?」

「こら、何をするんですか、犬。由夜の手料理を返しなさい」

「犬、食べたいならオレが作った奴があるけど」

「これでいいっつーの!」

「由夜のばかり食べないで…」

「犬、何故、僕を差し置いて由夜の料理ばかり食べているのですか?」

「と、特に意味なんてないれすよ」

「ないとしても腹が立ちますね。クローム、千種、犬を捕まえてください。」

「ぎゃん!何をする気れすか、骸さん!お前ら、離せ!ダメガネーっ!ブス女ーッ!」

「…骸様、やっちゃってください」

「骸様、はさみ……」

「お前ら、どこからそんなもん出したんら!!」

「それは、内緒。」

「おやおや、クローム、気が利きますね。いい子です。……さて、犬。南国フルーツはお好きですか?」

「ぎゃんっ!南国フルーツって、もしかしなくてもパイナッー…」

「そうですか、好きですか、大好きですか」

「いっ、言ってないれす!そんな事は一度も言ってないれすよ!」

「おや、では、嫌いなんですか?いい度胸ですね」

「え?な、何で、嫌いって言ったら、そんなに怒るんれすか!?骸さん、実は大好きれしょ、その髪型……、…あ。」

「……犬ってやっぱり馬鹿だよね」

「…クフフ、南国フルーツの話をしていたのに、どうして僕の髪型の話になるんでしょう」

「さ、さぁ?ミステリーれすね!」

「……覚悟は出来ていますね、犬」

「ちょっ、はさみ!はさみは止めてくらさいっ!」

「………」

「…ー…ッ!!」



チョキ チョキ チョキ バサッ チョキ クフフ チョキ



「ぎゃーんっ!!」

「はい、完璧です。僕とおそろいですよ、犬。嬉しいでしょう?」

「ひどいれす…!!」

「由夜、どうですか?犬の髪型、素晴らしいでしょう。」

「素晴らしくないれすよ!これのどこがいいんれすか!」

「………犬?」

「……へ?……あっ!ちがうれす!誤解れす!骸さんの髪型がダサいとか素晴らしくないとか言ってる訳じゃないれすよ!?」

「同じことです。この際、千種もイメチェンする事にしましょう!黒曜ボーイズ、リニューアルです。」

「え……っ!?」

「あっれー…柿ピーってば、珍しく声を上げて驚いちゃって、どうしたんらー?」

「……っ犬、怒るよ、本当に。……それ以上、オレに近寄るな。」

「へへへ、怒るのはなんでらー?」

「……ッ」

「涼しい顔してお前らって骸様の髪型、ダサいって思ってんだろ!一人だけ逃れようなんて思うなよな!」

「ダ……ダサいなんて言ってない。」

「嘘つけっ、目線を逸らすんじゃねぇ!お前なんてパイナッポーの刑だっ!!覚悟しろよ!!」

「僕の髪型はもう刑の域ですか。……犬、後で少々話があります。」

「お、オレは柿ピーの思ってる事を代弁したらけですよ、骸さん!」

「今はそういう事にしておきます。さぁ、クローム、千種のもっさり帽子を剥ぎ取りなさい。犬は逃がさないように千種を捕獲。」

「ラジャ」

「はい」

「……っ!!」

「クフフフフ……さぁ、千種、観念しなさい……」

「やめ……、む、骸様……っ」

「柿ピー、逃がさないぜ……コングチャンネル!!」

「な…ッ!バカ犬ッ…っ!」

「コングチャンネルのオレに敵うはずないっての。おい、髑髏!さっさと柿ピーの帽子、取れ!」

「千種、ごめん……」

「や、やめ……っ!」

『……』



煩い。
本当に、煩い。

どうして、ここまで騒げるのか。
だけど、ここまで馬鹿みたいに騒いでると苛々通り越して笑えてくる。



『……ふふっ』

「おや、由夜…?」

『ふふっ、あ、はは……っ』

「お…お前…っ」

「由夜……」

「由夜、笑ってる……、そんなにおかしい?骸様の髪型……」

「こら、クローム、どさくさに紛れてなんて事を聞いてるんですか」

「はいはいーい!オレが骸様の髪型おかしいって言うのとブス女とじゃ、何れそんなに反応が違うんれすか!贔屓れす、贔屓ー!」

「犬、やはりおかしいと思っていたんですか。そうですか、クフフ……」

「ぎゃん!はさみ片手に笑わないれください!オレはこれ以上、パイナッポーになれないれすよ!勘弁してくらさい、ナッポー王っ!」

「誰が何の王ですか…!!」

『はは…っ、ふふ…っ』

「…ー…たまにはいいものですかね。こんな騒ぎも」

『あー…もう…っ!何であんた達、そんなにバカかな…っ、お腹、痛い…っ』



こんなに笑ってしまうのは失礼かも知れない。

だけど、堪えてもやり取りを見てると、どうしようもなく笑えてくる。
こんなに笑ったの、何年ぶりだろう。

みんながいて、みんなで笑って
こういうのが幸せって言うのかな。
骸も、ちゃんと笑ってる。



『……』



ねぇ、骸、ちゃんと自分でストーリーを作れてるじゃない。
こうして皆で騒いで、バカみたいに笑って。

そこに私もいて、時間が経つのも忘れて。
こんなのも、いいかもしれない。



正し……



「由夜、今なら素直に打ち解けられそうです…!」

『…は?骸、あんたもう、そういう冗談は…』

「……もう、冗談でも遊びでも、ましてや玩具でもないです」

『え……?』

「さぁ、由夜、僕の胸に飛び込んで来ー…」

『……っ!か、咬み殺してあげる…!』



やっぱり骸の変態的求愛はごめんだけどね。



「ク……!やはり今日もトンファーで殴られる運命でしたか……!!」

『やっぱり一日一回やらないとね。』

「一日一回トンファーよりも愛が欲しいです、愛が。切実に。ください。」

『もう一発、欲しいのね』

「…ー…トンファーで殴られたい訳じゃないです!」



柄でもないけど願ってしまう。
こういう日々がいつまでも続きますように。

桜吹雪の中、少しだけ、みんなに近づけた気がして。
それが、嬉しく思う。

こんなの自分らしくない。

だけど、たまには自分らしくないがいいかもね。



end



2007/04/16

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