『…最初の話に戻す。』

「……、…どうぞ。」

『悪いけど、そうは思わない』

「……?」

『日々が続く続かないとか、第三者がストーリーを作ってる訳じゃない。』

「由夜さん…」

『今を続かせたいと思うなら自分で作るべきよ』

「……」

『咲いたら終わりじゃないでしょう、桜は来年も咲く』

「………」

『落ちた花びらだって風が吹けば、空を彩ることも出来る。』



思った事をありのまま伝えると六道骸は驚いた顔で私を見ていた。
そして続く沈黙。

……って何で、私はこんな恥ずかしい事を言ってるのか。
私、こんなキャラだったっけ?

でも、そんなのは別にいい。
何もかも諦めたような六道骸がムカつくんだから仕方ない。



『それに、骸は今を一時の幻想に過ぎないって言ったけど幻想なんかじゃない。』

「……、本当にそう、ですかね」

『当たり前。何度、あんたの変態行動の餌食にされたと思ってるのよ』

「……由夜さん」

『…ー…そうよ。あんな濃い毎日にされたら忘れたくても忘れられないわよ。』

「………」

『あんなに私の静かな時間を潰したのに幻想だった、なんてとんだ悪夢よ』



イラつく、ムカムカする。
追いかけて来るのに、うざったいくらい傍にいるのに、よく考えれば追いかけてくるだけで、ちゃんと距離を保っている。
私の事を好き勝手に調べてるくせに私は六道骸の事を何一つ、知らない。



「……ク」

『……?』

「クフフ、クハハハハ……っ!」

『な、何よ。何で笑うのよ…』

「当たり前、忘れたくても忘れられない、ですか…」

『そうよ。あんたのせいなんだからね』

「……由夜さん」

『…今度は何?』

「…いえ、由夜の無自覚ツンデレっぷりに萌えました、とでも言っておきましょう。」

『意味が分からないけど、とりあえず咬み殺してあげる』

「由夜に殴られるのは嬉しいですが今日は謹んで辞退させていただきます。」

『………』

「ほら、トンファーをしまってください、桜に迷惑がかかるでしょう。こんなにも懸命に美しく咲いているのに」

『……っ!』

「今の会話は忘れてくださって構いませんよ。今日の僕がおかしいと思ったならば、それは……」

『……』

「桜のせい、です」

『六道骸……』

「先程のように骸、と呼んでください。」

『……、骸……?』

「僕にとっての風はやはり貴女でしょうね。」

『………?』

「……ストーリーは自分で作るべき、そう言いましたよね…」

『……言った、けど』

「望んでもいいのなら、僕は未来をこう綴ります。」

『……』

「由夜が霧を晴らして、僕の手を掴んでくれる日が来ると、そう願います。」



ざわっと吹いた幻想的な桜吹雪の中、オッドアイの瞳が私を見つめる。

ふわりと穏やかに優しく微笑んだ骸は怖いくらいに綺麗。
あまりに綺麗な笑みで惹きつけられたように目が離せなかった。



『…ー…っ』



まるで転入時、骸が初めて教室に入って来た時のように。

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