私は読書、恭兄は桜に寄りかかって風に吹かれて過してた時だった。
恭兄が苛々した様子で立ち上がる。

変態って誰の事?
疑問に思うと同時に私の頭に浮かぶのは、あの変態。

恭兄の視線の先を見つめると、そこには予想通り見慣れた奴がいた。



『………』

「……」

『何で、ここに六どー……』

「由夜、せっかくの花見なのに不愉快な名前を出さないでくれる?」

『……何で、ここに変態がいるんだろうね』

「あぁ、本当に神出鬼没だよ」



そういえば恭兄も六道骸の事、苦手だったっけ。

六道骸は私達に気付いてないみたい。
だけど、ガサッと音を立ててしまえば驚いたように六道骸はこちらを見た。



「…おや」

『……』

「……、こんにちは、由夜さん」

「話すことないよ、由夜」

「…あぁ、雲雀恭弥、君もいましたか。」

「丁度、時間を持て余していた所だよ」

「そんなに殺気立って……、すみませんが、僕は戦う気はありません」

「ワォ、逃げるんだ」

「どうとでも言って下さって結構ですよ。僕は千種達と花見を楽しもうと思いましてね。」

「花見?君達が?」

「えぇ。丁度いい場所を見つけたのですが……まさか、こんな所で由夜さんに会えるとは」

『………』

「クフフ、今日もツンデレなんですねぇ、由夜さんは」

「由夜を見ないでくれる?汚らわしい。さっさと殺るよ」

「まったく、君はどうしてそう、自己中なんですか。」

「君が言える事じゃないでしょ」

「まぁ、そうですがね。そういえば、桜の下で戦うのも二度目でしたね。もっとも、あの時は……」

『あの時?』

「……!!」



話を聞いていると恭兄と六道骸は以前に戦った事があるみたいだった。
六道骸の話を遮るように恭兄はトンファーを構えて攻撃を仕掛けた。



『あ……』

「………ッ」

「クフフ、当たりませんよ。」

『………』

「たまには由夜さんに、かっこいい所を見せたいものですね。負けません。」

「よそ見しないでよ」

『……』



目の前で繰り広げられる激しい戦闘。
……信じられない、六道骸が恭兄と互角だなんて。

そういえば、転入早々、黒曜の不良を占めたとは噂で聞いたけど、もしかして六道骸って強いの?
脱獄囚だってディーノが言っていたし何より憑依だなんて特殊な力を持っている。

一体、何者なんだろうか。
ぼーっと恭兄と六道骸の戦いを見入っていると、すぐ後ろから声がした。

振り向くと、これまた見慣れた二人組み。



「ひゃーっ骸さんに遊ばれてんなー、アヒルの奴」

「…疲れた。帰ってシャワー浴びたい」

『……』

「って、由夜じゃん、こんな所で何してんらよ」

『お花見』

「…それしかないだろ、馬鹿犬」

『千種君たち、よくここに入って来れたわね。リーゼントの人達いなかった?』

「……いた。」

「あんな奴ら、オレらにかかれば楽勝らっつーの!」

『……へぇ。千種君も犬も中々強いんだ』

「そりゃあ、そこらの人間よりかはな。つか、骸さんの方が強いし。」

『……そう』



転入時期からして六道骸と一緒に脱獄した仲間っていうのは千種君と犬の事…?
まぁ、私には関係ないから聞かないけど。
脱獄囚って言っても千種君と犬は無害だしね、



『……』



目の前で繰り広げられる恭兄と六道骸の戦い
見ていると段々、ムカついてきた。

六道骸、これだけ戦えるなら私の攻撃なんて余裕で避けられるでしょ。
本当、どこまでも人を馬鹿にしてる。



「…由夜、何か怒ってる?」

『ちょっと、ね。六道骸は今までわざと攻撃に当たっていたのかって思ったら腹が立つ』

「……骸様、前に由夜に殴られるとゾクゾクするって言ってたから。」

『………』



あぁ、なるほど。
それで随分と長い間、女王様ネタを引っ張ってたのね。あの、ドM変態男。

でも、どうせ、そういう発言も私で暇つぶしをするためのネタだろうけど。

本当ならば相手にしない方がいい。
けれど、馬鹿なことばかりクフクフ語られるとどうにも手が出てしまう。

いい加減に何とかならないかな。



「早く、戦い終わらねぇかな。腹、空いたびょん!」

「……」

『………』

「犬、千種、先に食べていて構いませんよ。僕はもう少し運動していますから」

「よそ見してるなんて余裕だね。」

「クフフ、僕が余裕に見えますか。君が焦って入るからでは?」

「ひゃーっ!それじゃ、お先にっ」



千種君達は私達の隣に手際よくシートを敷く。
そして、恭兄と六道骸を観戦するかのようにジュースやらお弁当、菓子類を広げ始めた。

…やっぱりここで食べる気だったのね。
まぁ、別にいいけど。



「いったらきまーす!」

「犬、菓子は飯を食べた後にしなよ」

「分かってるって!」

「…なら、いいけど。あ、由夜は食べるだろ…?」

『え…?』

「たくさん、用意してきたから。」

『あ、ありがとう…。だったら私のお弁当も…』



一応、風紀委員の人達にも用意したのに恭兄が了解しなかったから、かなり余ってるのよね。

草壁さんにはいつも恭兄がお世話になってるから、こっそりと渡しておいた。
涙を流して感動してたから、毎日、こき使われてるんだな。
私が言えたことじゃないけど、恭兄はもう少し気遣った方がいいと思う。



「お、お前が作ったのか、これ」

『そうだけど。いらないなら別に…』

「食う!」

『…そう』

「つか、柿ピーの料理に飽きてきたから丁度、いいつーか…」

「……犬、夕食抜き。」

「ぎゃん!ちげーって!柿ピーの食べたくねぇって訳じゃねぇよ!!夕食抜き、勘弁!」



犬が騒ぎ出した直後、再び背後から物音。
今度は一体、誰だろう?

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