『開けなきゃだめ…?』

「プレゼントは普通、開けるびょん。」

『いや、出来れば綺麗なラッピングのまま飾っておくだけの方が…』

「何、言ってるんら?」

『………』



千種君だったらきっと、このままでもいいって言ってくれるだろう。
六道骸の事を大切に思っているだろうけど、私に対しての六道骸には引いているし行動に何かしら思う事もあるだろうから。



「せっかくの骸さんからのプレゼントなんらぞ!」

『……』



犬も分かってるはずなんだよね。
最近の骸さんは変だって言ってて引いてたし。

きっと犬は根が素直すぎるから、プレゼントが中身によって時にマイナスになると言うパターンを想像してないんだ。

何だったっけ。
昔話の大きい箱と小さい箱の話。

小さい方の方が得するってあったじゃない。
このヘアピンが小さい箱なら、大きい箱を意味するのは骸からのプレゼントだ。



「お前が開けないならオレが開けるびょん」

『わ、分かった、分かったわよ。開けるから!』

「……!」



私の近くに寄って来てわくわくしている犬。
その雰囲気に負けてしまい開けるという選択肢を選んでしまった。

イマイチ、気が乗らないけれどリボンを解き包装を取って中を覗く。

中に入っていたものは……



「何らったんだ?よく見えないんらけど…」

『……犬、六道骸は保健室?』

「え…?」

『どこにいるの?』

「ぎゃん…っ!!お前、今、顔がアヒルみてぇに怖ぇぞ…!?」

『アヒルじゃないって言ってるでしょう?』

「む、骸さんは…」

「僕ならここにいますよ、由夜さん」

「骸さん!ついでに柿ピー!」

「そんなに僕に会いたかったんですか?」

『……』

「クフフ、寂しい思いさせてすみません。もう大丈夫ですよ。僕は傍にいます。」



何を勘違いしているのよ、この変態。

歯の浮くようなセリフと共に手をぎゅっと握られると背筋にぞぞーっと寒気が走る。
同時に何とも言えない感情がふつふつと湧き上がって来た。

今、私はどんな表情をしているのか。
傍にいたはずの犬はびくびくと震えて千種君の方へ逃げてしまっている。



「骸さん!!逃げた方がいいびょん!!」

「何故です?…と、おや?由夜さん、僕のプレゼントを開けてくれたのですね。」

『えぇ』

「どうですか、お気に召して頂けましたか」

『………』

「犬、由夜、どうしたの…?何か怒ってるみたいだけど…」

「骸さんのプレゼントを見てからアヒルみてぇになった」

「骸様、何をプレゼントしたんです?」

「クフフ、見て分かりませんか、鞭ですよ、鞭。見てください、これで完璧ですよ……」

「骸さん、そんな事、言ってる場合じゃ…っ」

「犬、少し離れた方がいいよ。」

「柿ピー!?だって、あのままじゃ……」

「クフフ、今度からトンファーではなく鞭を使ってくださいね。」

『………』

「使い方は大丈夫ですか?何でしたら僕が手取り足取り教え………」

『……』



これ以上、変態発言を聞きたくない。

六道骸の言葉を遮って、私は鞭を使った。
ヒュンヒュンと、いい音がして六道骸を拘束する事に成功した。



「骸さん!由夜の奴、鞭を使うの慣れてるびょん!!」

「そのようですね。さすがです、由夜さん…」

『……』

「ですが一体、誰に使用したのですか?すごく気になー…」

『お礼を言わなきゃね、六道骸。』

「…はい?」

『咬み殺してあげる。今なら鞭で身動き取れないでしょ。』



片手で鞭、もう片方はトンファー。
鞭を思いっきり引っ張って六道骸を引き寄せて、勢いに任せてトンファーで攻撃をした。



「由夜さん、待ってください!いくら何でもトンファーと鞭の合わせ技はドSにも程があります…!!」

『問答無用』

「……ッ!!」

「む、骸さん!?由夜!卑怯らぞ、お前ーっ!!」

「犬、止めない方がいい。めんどい。」

「骸さんがあんなに殴られていいのかよ!」

「……犬、これ見て」

「んぁ?何だこれ」

「いいから、読んで」

「はぁ?…っと、何々…?」



"由夜さんに愛を込めて鞭を贈ります。
これで完璧な女王様ですね。

クフフ、これで色々と楽しみが増えました。
他の方に使っちゃダメですよ。"




「…って、これって骸さんが書いたメッセージカードか!?」

「これを見て、さらに怒ったんだろうね…」

「………」

「……犬、引いてないで続き読んで。」

「お、おう…」



"P,S
この鞭は普通に戦闘で使えるものです。
日常生活、特に雲雀恭弥と暮らしていて身の危険を感じたら遠慮なく使ってください。
ボタンを押せば電流が流れる仕様になっています。

さすがの雲雀恭弥もこれで一発でしょう。"




「……って、電流!?」

『犬、電流ってこのボタン?』

「なっ!聞いてたのかよ!」

『このボタンかって聞いてるの』

「犬、今の由夜に逆らわない方がいいよ。オレ達も殺られる。」

「そ、そうみたいらけど」

『犬』

「ぎゃん!!」



どこまで変態発言すれば気が済むのよ、六道骸!
それに、からかうのもいい加減にしてって何度、言えば理解してくれるのか。

一瞬でも、見直しかけた私が馬鹿だった…!!



『じゃあ、ゆっくり眠ってね、六道骸』

「由夜さん…!!それは身の危険を感じた時に…ッ」

『まさに今。』

「……!!」



慌てている六道骸を見て不思議と口角が上がり、にっこりと笑って容赦なくボタンを押した。



「由夜さん…!!」

『……』

「…ー…っ!!」



制裁を加えて我に返れば大惨事。
やりすぎてしまった感があるけれど、お決まりの光景に犬も千種君も呆れて六道骸を見つめていた。



「犬、分かった?前に言ったけど由夜は意味なく暴力はしない。」

「………」

「骸様、女王様ネタ引っ張りすぎだし…」

「骸さん、鞭をプレゼントって本気だったんら…」

「骸様はいつでも本気だよ。オレ達は放っておけばいい。…めんどいし。」

「…そうすっか。あんなに殴られて、しかも電流を浴びせられても懲りないだろうし、何か嬉しそうな感じらったし」

「……電流を浴びせられる直前に由夜の笑顔が見れたからじゃない?」

「最高に冷ややかな笑みらったけどな、…由夜も笑うんらな」

「……笑うよ。スーパーでタイムセールの商品を勝ち取った時とか由夜の笑顔、見る」

「なっ、何だよ、それ!」

「……気になる?」

「な…っ!?べ、別に気になんねぇよ……」

『……』



ふぅと息を吐くと、苛々が外に出て行ったようで心は穏やか。

鞭を最初、見た時はムカついた。
だけど中々、使えるかもしれない。

相手を近づけさせない遠距離攻撃の武器。使い勝手がいい。
トンファーだと嫌でも六道骸に近づかないといけないしね。



『………』



雲雀由夜、レベルアップ。

…なんてね。



end



2007/03/20

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