屋上でのんびりしていた私に声をかけてきたのは六道骸。 その後ろには千種君と犬もいる。 教室は群れが多いから、屋上へに移動し一人の時間を満喫していたというのに邪魔をするのはいつでも六道骸だ。 たまには一人で居させて欲しいと思っていても、その考えは黒曜に六道骸が居る限り叶わないと思う。 私は諦めて六道骸の話を聞いた。 無駄に足掻くと話が余計にこじれて面倒な事態になるからね。 『……今日は何?』 「由夜さんの事をもっと知りたいのでインタビューさせて頂こうかと」 『……犬と千種君まで何でいるの?』 「骸さんがどうしてもって言うから来たんら!早く答えろよな!」 『………』 「思えば僕が話す一方で由夜さんの内面に関して何一つ知らない事に気がつきました」 『……話す事なんてない』 「では、質問するので答えて頂けませんか?」 『だから、何もないわよ。話す事なんて』 「まぁまぁ、いいではないですか」 『……』 質問に答えるだけ、か。 それなら無理に抵抗しなければ早く終わるかな。 読みたい本もあるから私は応じる事にした。 『……何が聞きたい訳?』 「いいのですか!」 『答えたらさっさと、どこかに消えてくれるんだったらね。』 「そうですか!それでは、さっそく!」 『……』 「犬、千種、お願いしますよ」 「了解れーす」 「……分かりました」 『……?』 千種君が出してきたのはラジカセ。 カチッと録音ボタンを押して小型マイクを六道骸に渡した。 …何かやけに本格的なんだけど。 『……なんで録音』 「インタビューですからね。」 『……』 それでは行きますよ、と言って六道骸はマイクに向かって言い放つ。 ![]() (むくのムクムクインタビュー)(エコー) 「始まるびょ〜ん」 「……始まるよ。…めんどい」 『……』 千種君は呆れつつ、そして犬はノリノリ。 犬は楽しそうだからいいとして。 千種君、こんな下らない事に付き合ってあげるなんて、六道骸とはどんな経緯で仲間になったのか、少しだけ気になってしまう。 「むくのムクムクインタビュー記念すべき第一回は僕の愛しのクールビューティープリンセス、雲雀由夜さんです」 『………』 「クフフ、この日を待ち望んでいた事か…!何でも答えてくれるというので早速、あんな事やこんな事をインタビューしましょう」 『何でも答えるだなんて言ってない。』 「おやおや、どうしたんですか、由夜さん、トンファーを構えて」 『身の危険を感じたから』 「期待している所、申し訳ないのですが、いくら僕でも犬や千種の前でそんな事をしませんよ」 『期待してる訳ないでしょ』 「後で二人っきりで、ね?由夜さん」 『すごくムカつくんだけど。後も先もないわよ』 「では、インタビューを始めます」 『人の話を利きなさいよ……』 「一つ目の質問です」 『……、…はいはい』 「休日は何をしていますか?」 『………は?』 「どうかしました?」 『普通、こういうのって誕生日とかから始まらない?』 「あぁ、それはもう知っているので。」 『知ってる…って、私、話した覚えないんだけど』 「えぇ、そうですね。それは置いといてこちらを質問を……」 『まさか休日の予定を聞きだして、偶然ばったり会いましたねとか装って私の休日を潰す気じゃないでしょうね…』 「そ、そんな事はありませんよ!有意義に過す予定です。二人っきりで」 『……答えたくない。次の質問。』 「この質問が一番、重要……」 『咬み殺してあげる』 「……それでは次の質問にいきますよ。仕方ないですね」 拗ねてぺらぺらとメモ帳をめくる六道骸。 今日の六道骸は何か妙にイラつく態度なんだけど。 人をからかうのも、いい加減にして一人にさせて欲しい。 『千種君、どうしてあんたらのボスは、こんななの…』 「ごめん、骸様がいつも…」 『千種君が謝る事じゃないよ』 「……ん」 千種君はのんびりしてるから六道骸と話した後は妙に落ち着く。 煩くないし、私同様に六道骸の奇妙な行動に面倒と感じてるからかな。 六道骸の事を大切だと思っているには違いないけど、常識を持ち合わせていると思う。 ふと、ため息をついて六道骸を見る千種君を見て私は疑問が一つ浮かんだ。 『そういえば、千種君は何で六道骸の事を様付けしてるの?』 「………」 『……千種君?』 「…………」 『……?』 「………」 『……考え込んでどうしたのよ』 「………なりゆき?」 『…何で疑問系?』 「……今まで、考えた事なかった」 『……そっか』 確かに千種君が他の呼び方するのって違和感あるかもしれない。 だけど同級生を様付けって、おかしいわよね。 恭兄も六道骸の事を知っていたし、裏で何かしているのか。 そんな事を考えていると六道骸が千種君と話し始めた。 『犬、千種君と六道骸どうしたの?』 「知らねー。」 何があったのか。 六道骸、喧嘩腰の口調のような気がするんだけど。 関わりたくないけれど、近くにいるから嫌でも耳に入ってしまう。 「……千種」 「…何ですか、骸様」 「以前から気なって気になって仕方なかったのですが」 「……はい?」 「何故、由夜さんは千種を"千種君"と呼んでいるのです?……羨ましい!!」 「……?」 「僕なんて未だに六道骸とフルネーム呼びですよ!?君付けなんて、何やら親しげですし…」 「………骸様」 「いつから恋人の知り合い以上の関係になっているんですか!」 『…っあんたの恋人じゃないわよ!!』 「いずれ、そういう関係になる運命なんですよ」 『最悪な運命ね』 「つーか、それ、オレも気になるんらけど!柿ピーと由夜、そんなに話してないだろ!」 「……」 「ぶっちゃけ、オレらの中で一番、口数少ねぇし影薄いのに!!」 「そうです、そうです。いい事を言いましたね、犬。GJです」 「………」 『千種君、何か色々、言われてるけど』 「…めんどい」 『……ね、私もめんどい』 「のんびりと二人で以心伝心しないでください!さぁ、由夜さん、インタビューに答えてください!」 『インタビュー?これが…?』 「そうです、この際、これを答えたら他は見逃します!」 『…それで静かな昼休みが手に入るならいいか。それじゃ、話す。』 「まず、どうしてそんなに親しげなんですか?」 『ある意味、仲間。ある意味でライバル。ねぇ、千種君。』 「……うん」 「……まったく意味が分かりません。」 『学校の帰りや休みの日によく会ったり…』 「千種、僕を差し置いて下校デートとか甘酸っぱい青春を満喫しちゃってるんですか。」 「……デートじゃ、ないです」 『タイムセールとか、どこのスーパー安いとか教えてもらってるのよ。で、数が少ないと、取り合いになるライバル』 「……」 「……なるほど、主婦仲間ですか。クフフ、所で由夜さん。」 『…他に何か?』 「由夜さんが食事を作ってるんですか?」 『恭兄はそこらへん無理だからね。』 「つまり、雲雀恭弥は毎日、由夜さんの手料理を…!?」 『そうだけど。あ、言っとくけど、あんたに作るつもりはないから』 「いずれ作って頂く事になりますけどね、毎朝毎夕」 『ありえない。』 「クフフ、照れなくていいですよ」 『照れてないわよ』 「ツンデレのデレはまだですか、まったく」 『あんた、そんなに咬み殺されたいのね』 何だかんだ話してる間に昼休み終了のチャイムが鳴り、私の昼休みは騒がしいまま終わってしまった。 余談だけれど休日や下校途中に立ち寄るスーパーで千種君に出会うはずが六道骸に会う確率がアップしたのは言うまでもない。 「学校の帰りや休みの日にスーパーで千種君によく会う」なんてうっかり言わなければよかった。 「由夜、今日の買い物、僕もついていくよ。」 『何で?大丈夫だよ。六道骸に必ず会う訳じゃないしね』 「大丈夫じゃない。少し離れたスーパーに行こう。バイク、出してあげる」 『……ありがと(六道骸もだけど恭兄もスーパー似合わないな…)』 end 2007/03/06 |