まさかついて来てないわよね?
嫌な予感が胸を過ぎり後ろを見れば、案の定、追いかけて来ていた。

心の底から気持ち悪くて仕方がない。



『……っ』

「クフフ…」

『…っもう!笑いながらストーキングしないで!シャレにならない!』

「ならば止まってください。制服で走られると色々と際どくてドキドキしてしまいますよ…!!」

『どこ見てんのよ、六道骸!』

「それはもちろんスカートや背中…!!黒曜制服はチラリズムがよく分かってますね…!!」

『……っ変態』

「男なんて皆、変態ですよ。オープンかそうでないかの違いです」

『大真面目に男を語らないで。変態。』

「クフフ、それにしても足が速いですね、スカートの中、見えてしまいそうです」

「…ねぇ、僕の由夜をやらしい目で見ないでくれる?」

『あ……』



曲がり角からスッと出て来た人物。

どうして今日はこんなに慌しいのか。
この人物に出会って、どうなっても知らない。
そう思って後ろから追いかけてくる六道骸を見た。



「おや、雲雀恭弥ではないですか。どうして君がここに…?」

「君には関係ないよ」

「ありますよ、ちなみに君の由夜ではなく僕の由夜ですからね」

『え…?』



会話になっている二人に驚いた。
どうやら知り合いみたい。



「由夜、どこで六道骸と知り合いになったんだい」

『……うちのクラスに転校してきたの』

「ワォ、単なる不可抗力ってやつだね。」

『まぁね…』

「だから、並盛においでって言ってるでしょ、僕がいるから安全だよ。」

「不可抗力と言う名の逃れられない運命ですよ、雲雀恭弥」

「……さぁ、由夜、帰ろうか。」

「無視ですか!大体、由夜さんを送るのは僕の役目です!使命です!邪魔をしないで頂けますか」

『……』



ビシッと決めて熱い視線で私を見つめる六道骸。
うざったいほどの視線、私は冷めた視線を六道骸に返した。

…あぁ、どうでもよくないけど、どうでもいいからとにかく早く帰りたい。



「そこまで妄想が広がると見てて痛々しいね。行くよ、由夜」

「雲雀恭弥。大体、どうして君が由夜さんを知っているんです?」

「ふぅん。知らないんだ。」

「何がですか。」

「僕と由夜の関係。」

「クフフ、何もないでしょう。由夜さんが僕というものがありながら浮気なんてするはずありません!」

『………』



何で私が六道骸と付き合ってる前提で会話をしてるんだろうか。
まさか六道骸の脳内では私は既に恋人になっているの?何それ、不愉快、極まりない。



「妄想は脳内だけに留めておきなよ。言っておくけど僕は君の知らない由夜を知っているからね。」

「な…っ、そ、それはどういう……」

「教えないよ。僕と由夜の秘密だからね。」

「……僕だって由夜さんとあんな事やこんな事してますから」

『してないわよ。恭兄も意味深な事を言わないで!この変態がいらない妄想までするでしょ!』

「恭兄…?…まさか兄、ですか?」

「……チッ」

『舌打ちしないで、恭兄。』

「別にいいだろ。さぁ、僕達の家へ帰ろう。」

『一人で帰れる。恭兄は一人で風紀委員の見回りでもすればいいじゃない』

「してたよ。丁度、黒曜まで来たから迎えに来ただけ。バイクの後ろの乗りなよ」

『………』

「……不潔です。」

『は?』

「一つ屋根の下、兄妹であんな事やこんな事ですか!なんて羨ましい……っ!」

「そういう事だから、君は割って入らないでよね。僕と由夜の生活に。」

『……』



あぁ、いらない妄想し出した、この変態。

しかも恭兄も何、言ってるの。
私達は兄妹。恋人じゃないでしょ。兄妹で同じ家に住んでるだけじゃない。

前々から過保護と思っていたけど頭が痛くなってきた。



「兄妹は結ばれません!由夜さんの幸せを願って潔く身を引くべきです」

「仕方ないだろ、兄妹でも愛し合っているんだから。」

「何なんですか、その禁断の萌え設定…!何て妬まし……いえ、羨ましい!!」

「君なんてただのクラスメイトじゃないか。可哀相にね。」

「………!!」

『……』



騒いでる恭兄と六道骸を見ていると眩暈がして額を押さえた。

大体ね、六道骸。
この場合は普通「羨まし……いえ、妬ましい!!」っていうセリフを言わない?
どうしてこう、こいつは欲望最優先に生きてしまっているんだろうか。

「由夜は僕の」だの口論は止まらず私の苛々は最高潮に達していた。
我慢ならなくて「ある物」を取り出して構える。



『ねぇ、二人とも』

「…ん?」

「どうしましたか」

『咬み殺してあげる』

「な…っ」

「君までトンファーですか…!!」



私用のトンファーで六道骸と恭兄に一撃ずつお見舞いしてやった。
これで、すぐには立ち上がれないはず。

この騒ぎに六道骸と、いつも群れている柿本千種、そして城島犬が駆けつけてきた。
千種君はスーパーの袋を両手に持っているため城島君の後をのんびりと追いかけている。



「おい、柿ピー!骸さんいたぞ!」

「……めんどい」

「…って、あー!!」

『何よ、煩い』

「煩いじゃねぇよ、骸さんに何してんだびょん!!骸さん、大丈夫れすか!!」

「……っ」

『スッキリした。それじゃ、私は今度こそ帰らせてもらうから』

「…っ由夜!僕も同じ家に帰るって事、忘れてないかい」

「そうですよ!忘れないでください。」

『……、恭兄、バイク借りるから。じゃあね。』

「……っ」

「おい!骸さんを殴るんじゃねぇびょん!!聞いてんのか、アヒル女ぁぁぁ!!」



城島君の耳を塞ぎたくなる程の大声。
気にすることなくバイクで去った。



『……』



それにしても恭兄はまぁ、まだ分かるとして……何で「同じ家に帰る」で六道骸まで同意してるのか。

明日は六道骸のどんな妄想に付き合わされるんだろう。
こんな慌しい日々、早く解放されたい、そう切実に願った一日だった。



「……クフフ、それにしても中々、いい攻撃しますね。僕の由夜は。」

「…当たり前。僕の由夜だからね。君みたいな変態に絡まれた時にと思って護身用にトンファーを持たせたんだよ」

「クハハ…!君もやられてると言うことは君も彼女に変態って思われてるって事じゃないですか?」

「……君とはもう口訊かない。」



end



2007/02/22

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