黒曜中、放課後の中庭。
私は授業が終わると、いつものベンチに座り本を開いた。
昨日も遅くまで本を読んでいたから授業中はぼーっと過したけれど退屈な時間が終わると眠気も覚めるってもの。

だけど、現在進行中で苛々して仕方がない。
原因は数あるベンチの中、わざわざ私の隣に座って来たこいつ、六道骸のせいだ。



『……』



六道骸は私のクラスに転入してきた転校生。
ここ最近、何故か纏わりついて来る。

今も勝手に隣に座りクフフ、と特徴的な笑みを浮かべて変な視線を送ってくる。
まるで、からかっているような馬鹿にしたような態度。

捉えどころのない性格の六道骸は正直に言って苦手な部類の人間。



「……」

『………』

「…クフフ」



十分にスペースがあるベンチなのに密着してきたため、私は何気なく人一人分の距離を作った。

あぁ、うざい、気持ち悪い。
見られていると本に集中、出来ない。

でも、このまま無視し続けていれば、そのうち飽きて先に帰るでしょ。



「クフフ……」

『……』

「………」

『……、……』

「……」

『………』

「…照れ屋なんですね、由夜さんは」

『今までの行動をどう解釈したら照れ屋になるのよ、六道骸』

「だって、照れてしまって僕を直視、出来ないないんでしょう?」

『は?』

「若干、距離を置いたのも近いから恥かしい、という所ですかね」

『………』



飽きれば帰るだろう、そう思った私は甘かった。
こいつの頭はどうして都合のいい方に変換してしまうんだろうか。

…いっその事、殺ってしまいたい衝動に駆られたけれど、ここは何とか理性の勝ち。



『見れないんじゃないし恥かしい訳でもないから』

「おや…、そうなんですか?」

『そう。私は本を読んでるの、邪魔しないで』

「邪魔はしていませんよ、貴女の傍にいるだけなんですから」

『……』

「僕がいつ、本を読むのを邪魔しましたか?」

『………』



どうして、こういう時だけ正論を言うのか。
確かに傍にいるだけだし害がないと言えばない。



『……』

「クフフ…」



こいつには何を言っても無駄なのか。
笑顔に誤魔化されて何を考えているのか分からないため返答に困る。

転校当初はこんな奴だとはつゆ知らず、今、思えば、本当にありえない事だけど、綺麗な端整な顔立ち、紳士的な立ち振る舞いにうっかりときめいた。
見た瞬間は時間が止まったような感覚になった。



『……』



見惚れたんだと思う。
それは認める。

だけど、それは一瞬だけ。

話しかけてきたため会話をしたら、こんなに変態でストーカーで気持ち悪い奴だとは思わなかった…っ!!

容姿、成績、運動は完璧なんだから性格も完璧なりなさいよ、まったく。



『はぁ……』

「おやおや、ため息を吐いてしまう程、僕が愛しいですか。可愛いですね、由夜さん」

『……からかうの、いい加減にしてくれる?』

「からかってなどいませんよ、本心です」

『……、…帰る』

「………」

『ついて来ないでよ」

「はい、ついていきません。送っていきます。」

『いい。迷惑。私は一人がいいの』

「……」

『…あんたもさっさと帰りなさい』

「………クフフ」

『…何で笑う訳?』

「由夜さんは俗に言うツンデレなんですね」

『……さよなら。』



一瞬、黙った六道骸。
少しきつく冷たい言い方だったからかもしれない。
そう、心配した私が馬鹿だった。

またクフフと怪しく笑い「ツンデレ」という意味が分からない事を言うものだから脱兎の如く、この場を走り去った。

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