「…お邪魔します」 『そういえば、その姿で食べれるの?』 「えぇ、問題ありませんよ」 誘導されるままリビングへ。 目の前に出されたクッキーを突き食べると由夜は肘をついて、どこか機嫌が良さそうに僕を見ていた。 ……フクロウ姿が気に入ったんでしょうか? 「クッキー、由夜も雲雀恭弥も食べないんですか?」 『あるなら食べなくはないけどクッキーは誰かさんのせいで食べる気がまったく起きないのよ、私も恭兄も』 「……」 もしかしなくても以前の惚れ薬入りクッキーのせいですね…!! 視線が痛い。 僕はごまかすように、せっせとクッキーを突っつき食べた。 『…たくさんあるからクローム達にお土産に持っていってよ』 「ありがとうございます」 『それにしても、まさかフクロウになって来るとはね…』 「クフフ、ついつい会いたくなったもので」 『学校で嫌になる程、顔を合わせてるでしょ』 「いくら顔を合わせても嫌になりませんよ」 『はぁ、あんたって、まったく……』 「…ただいま」 由夜の言葉を遮ったのは帰宅した雲雀恭弥。 由夜は慌てて小さな声で僕に話かける。 『骸、オッドアイを隠しなさいよ』 「え、えぇ…」 「由夜、何、一人でぶつぶつ言ってるんだい」 ≪タダイマッタダイマッ≫ 『何でもない。おかえり、恭兄、ヒバード……』 由夜はとっさに僕の前に立ち、姿を隠してくれた。 瞬時に幻覚をかけて瞳の色を隠し念のため普通のフクロウの姿に変える。 「…後ろに何を隠したんだい」 『……何でもない』 「犬か猫でも拾って来た?」 『それは……』 ふぅ、と息を吐いた雲雀恭弥は由夜の後ろを見ると怪訝そうな表情で僕を見た。 「……」 「………」 そうなりますよねぇ、猫や犬でなくフクロウなんですから。 どこで拾って来たんだと思いますよねぇ。 「だめだよ、この子が狙われるでしょ」 ≪コワイッコワイッ≫ ツッコミはそこですか! 小鳥に害がなければ飼うつもりだったんですかね…! それにしても兄妹揃って本当に小鳥を大事にしてます。 やはり、猫でも犬でもなくバーズの小鳥に憑依するのがよさそうだ。 夜は由夜と一緒に眠れそうですしね、何も出来ませんが小鳥も悪くない。 いや、むしろいい。 「……クフフ」 「…ねぇ、このフクロウ、今、気色悪く笑わなかった?」 『…気のせいじゃない?』 「……」 妄想して、つい笑みを零してしまった僕をじっと見る雲雀恭弥。 由夜がフォローをいれてくれましたが雲雀恭弥は納得していない様子だ。 『……笑ったんじゃなくて鳴いたのよ、暗くなってきたから外に出たいんじゃない』 「ふぅん…、今は一切、鳴いてないけどね」 『それは…そう、だけど…』 「……!!」 由夜と雲雀恭弥の視線が集中する。 由夜は、ばれたら煩いからさっさと鳴いて外に出ろ、と言っているようだ。 …仕方ないですねぇ。 雲雀恭弥がいては僕も居心地が悪い。 今日のところは、この辺で帰りますか。 そうと決まれば、さっそく窓の方へ向き鳴いて羽ばたいて見せた。 「ホーホー、ホーホー…」 「……」 『ほら、窓に向かって鳴いてるじゃない』 「さっきみたいに鳴かないんだね」 フクロウ相手に無茶ぶりしないでくださいよ、雲雀恭弥…!! 大体、先程は鳴いた訳ではなく笑ったんですからね! 『……』 「………」 あぁ、由夜が無言で見つめてきます。 本来なら嬉しいはずですが、こんな状態では少しも喜べない。 『……』 「…ー…クッ」 わ、分かりましたよ! 分かりましたから、そんなに見ないでください…!! 怪しまれないように先程、笑ったように鳴けばいいのでしょう…!! 「…ー…ッ」 「……?」 「ク……、クフー…クフフー…」 「………変な鳴き声」 『……ふっ』 鳴かせておいて変な鳴き声とは酷いじゃないですか! 由夜にも笑われるは恥ずかしくてたまりません…!! 「………フクーン」 「……ほら、帰るみたいだよ。さっさと窓を開けなよ。」 『あ…、あぁ、うん……』 「……」 由夜は僕の足にクッキーが入った袋を持たせると窓を開ける。 翼を広げ飛ぶ前に雲雀恭弥を一睨みして雲雀家を後にした。 覚えておきなさい、雲雀恭弥…! この屈辱はいつか必ず返しますからね! 「ふっ、六道骸も馬鹿だね、あんな鳴き方、本当にするなんてさ」 『……え?』 「何で分かったのかって顔だね、由夜。」 『…何で気付いたのよ』 「僕は耳がいいんだよ。オッドアイを隠しなさい、とか話してたでしょ」 『じゃあ、わざとだったんだ、鳴かせたの』 「もちろん。由夜を騙して家に転がり込もうとした罰さ」 『……』 「気をつけなよ、由夜。今度は犬か猫……、あぁ、最悪、この子の身体を乗っ取るかもしれないからね」 『ヒバード?いくら骸でも、それはさすがにしないんじゃ…』 「よく考えてみなよ。」 『………、しないとは言い切れないかもね』 「だろう。」 end 2011/06/17 |