昼休み、骸達と昼食をとっていれば体育祭の話になった。
黒板には先ほどホームルームで話し合っていた「体育祭の出場競技について」が中途半端なまま残っている。

出場する競技を決めていたけれど皆、悩んでいたようでチャイムが鳴りホームルームは終了。
仕方ないから昼休み中に、それぞれ出たい競技に名前を書く事になっている。

最低一つは参加するように言われていたけど私は特に興味がなかったから出場するつもりなかった。

皆もそうだと思ってたけど骸は興味深げに黒板を見つめていた。



『どうしたの、骸』

「由夜は何か参加しますか」

『しない、見てるだけにしとく』

「え……、出ないの…?」

「分かった、実は運動音痴なんだろ!?ひゃーだっせー!」

『別にそういう訳じゃないから』

「クフフ、運動が出来ない由夜にも、もちろん萌えますので安心してくださいね」

『意味が分からない事を言わないでくれる?というか骸達は競技に出るの?』

「えぇ、たまには参加するのもいいと思いまして……、由夜、出ないのであれば僕らの応援をしてくれますか」

『応援くらい別にいいけど…』

「クフフ、由夜のチアガール姿…!正直、競技に出ている場合じゃなくなってしまいそうです…!」

『……』

「由夜、何か一つだけ出れば?…めんどいけど。」

『…そうする』



チアガールなんてやる訳ないでしょ。
冷えた目で骸を見つめると少しも気にせずに妄想をし始めてる。

千種君の言う通り何か一つ競技に出て後はゆっくりする事にしよう。
何もせず骸にチアガールを押し付けられたら嫌だもの。

そうと決まれば何がいいかな。
百メートル走が一番、無難な気がするけど。



「由夜」

『何?』

「僕と二人三脚などいかがでしょう」

『……』

「足を縛り細い肩を抱く。密着した身体、走れば由夜からは荒く熱い吐息が零れて……クフフフフ…」

『……ねぇ、クロームは何か出るの?』

「私は…、障害物競走にしようかなって…」

『障害物競走、か』

「クフフ、障害物競走……、そうですね、障害物競走でしたら…」

『骸、何でもかんでも拾って妄想しないで』

「由夜、骸様、聞いてない…」

『……まったく、犬と千種君は出るの?』

「んぁ?オレはやっぱパン食いに決まってんだろ!」

「適当に……、出来るなら出たくない…めんどい…」

『……』



骸と私以外はもう競技を決めているみたい。
横目で見ると骸はまだ妄想をしているらしくクフフと一人で楽しそうに笑っていた。
何で競技だけでここまで妄想を繰り広げられるんだろうか。

私達はそんな骸を冷ややかに見てるのに少しも気付かない。
けれど、ふと何かを思い付いたのか提案をしてきた。



「由夜、借り物競争に出ましょう」

『は?借り物競争?』

「えぇ、借り物競争は王道です」

『王道?』



何が?と言えば骸は勝ち誇ったように微笑んで流し目で語りだした。
嫌な予感がしたため視線を反らしたのは私だけじゃない。

しまった。
聞き返すんじゃなかった…!!



「体育祭の王道ですよ、借り物が"好きな人"や"気になる人"と書かれている紙を引き由夜はドキッと胸を高鳴らせる…」

「……骸様」

「なんで…」

『……(私が競技に出る前提で話してるのよ、いや、妄想か)』

「客席で応援している僕らはいつまでも紙を見つめたまま、その場に立っている由夜を不思議に思う…」

「……(一人の世界に入ってるびょん)」

「どうしようかと大勢の観客を見つめる由夜、だけれど自然に目に止めてしまうのは僕……、瞳が合えばより高鳴る胸…」

「……」

「そして由夜はこう思うんです。何故、こんな大勢の人の中で真っ先に骸を見つけてしまったんだろう…と」

『……(そろそろ強制終了していいかな、でもツッコミすら面倒になってきた)』



千種君は元より犬もクロームもツッコミしないから野放し妄想し放題の骸。
皆、聞き流しているけれどクロームだけは困りながらもじっと聞いてあげていた。

本当に健気でいい子だ。



「……」

「気持ちを認めたくなく恥ずかしそうに俯く由夜、しかしこのままでは皆に追い抜かされてしまう…」

「……骸様」

「何をしているんですか、由夜!僕はいても立ってもいられず由夜の元へ行き何も言わず手を取り走るんですよ」

「骸様…」

「走りながら繋いだ手、僕の後ろ姿を見て紙をくしゃっと握りしめる由夜……一着でゴールした時には顔を赤くして俯き、きっとこう言うでしょう。何で借り物が分かったのよ、と……!」

「あの、骸様…」

「クフフ、その後はもちろんー…と、クローム、どうしましたか」

「その…、由夜達なら出る競技の所に名前を書きに行きました…」

「……」

「私達も書きに行かないと…」

「……最近、僕の扱いがスルーされるか放置されるかのどちらかになってませんか」

「それはー……」

「おい、髑髏!お前も早く書きに来いよ!」

「う、うん…今、行く…」

「クロームまで僕をスルー、放置しないでください…!」

『そう言うなら骸も早く書きに来なさいよ』

「分かっていますよ、少々、遊びすぎて……おや?」

『どうかした?』

「…残っている競技、これだけですか?」

『そうみたいね。早い者勝ちだし仕方ないでしょ』

「……由夜は何に出るんです?」

『百メートル走』

「……」

『言っておくけど代わらないわよ』

「分かっていますよ、ですから当日は僕を応援してください」

『……チアガールはやらないからね』

「そこは妄想でカバーしますので何の問題もありません」

『……』



体育祭、どうなる事やら。
とりあえず、何事も問題なく過ごせますように。



end



2009/10/24

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