恭兄が眠って一時間弱。 無造作に置いてあった私の携帯が鳴った。 誰かと思いきや、相手を見ればそこには「六道骸」の文字。 ……私、電話番号、教えたっけ。 若干、出るのに躊躇していると、その間も鳴り続けてる。 『…仕方ない。…ー…もしもし』 ≪由夜、こんばんは≫ 『……こんばんは。で、用はなに?』 ≪クフフ、恋人同士なんですから用がなくてもいー…≫ 『切るわよ、骸』 ≪電話だと耳元で囁かれているようでドキドキしますね、照れてしまいます≫ 『………切る』 まったく会話が成立しない。 私は耳から携帯を離し電源を押そうとしたら必死で止めようとする骸の声が聞こえた。 ≪ま、待ってくださいよ、用ありますから≫ 『……、何?』 ≪おや?何か声が遠いですよ?電波が悪いんですかね≫ 『あぁ、携帯を離して喋ってるから』 ≪………≫ さっき囁かれてドキドキするとかバカな事を言ったからね。 それに耳元でクフフクフフ笑われるのが落ち着かないもの。 これくらいの距離で話すのが丁度いい。 ≪……、用事のことなのですが≫ 『ん?』 ≪惚れ薬入りのクッキーの事です。いらないならば売りつけた本人が引き取ると言うので…≫ 『……クッキーの残りが少なくなったけどいい?』 ≪だ、誰に使ったんですか…!!≫ 『使ったというか、勝手に食べられたのよ、恭兄とヒバードに』 ≪由夜、無事ですか…!!いけませんよ、禁断の愛など!!≫ 『……』 ≪何故、黙っているんです…?まさかもう事の後…!!≫ 『というか、今、……』 ≪な…っまさに最中なんですか!?≫ 『……』 ≪ちょっ、何故、黙るのですか…!!兄妹でやらしいですよ…!≫ 『……言っておくけど骸が想像しているような事は一切してないから』 ≪……そ、そうですか。ならば、よかった。≫ 『残りのクッキーは明日、持ってくから』 ≪えぇ、よろしくお願いします。ところで、雲雀恭弥と今、何をしているんですか≫ 『膝枕』 ≪な……ッ≫ 膝枕!?と大声が聞こえた瞬間、携帯を切った。 その声に恭兄は反応して目を開ける。 酷く不機嫌そうな顔、夢うつつでも骸の声が聞こえて機嫌を悪くしたに違いない。 『恭兄、起きた?』 「……起きた、けど」 『…そう、だったらどいて』 「どく?」 『そう、早くどいて』 惚れ薬の効果が切れたようで自分の状況が分かってないらしい恭兄。 私が見下ろす形にきょとんをしている。 「何で僕…」 『……、いきなり倒れたのよ』 「倒れた?」 『そう、寝不足じゃない?』 「………」 『……』 誤魔化せるだろうか。 惚れ薬入りクッキーだったなんて恭兄に言えるはずがない。 また、食べてしまわないように先手を打っておこう。 『ねぇ、恭兄、さっきクッキー、食べてたでしょ』 「あ…、…あぁ。キッチンにクッキーがあって…、由夜が作ったのかい」 『骸に押し付けられたのよ』 「………」 『……』 眉をピクリとさせて嫌な顔。 恭兄は私が作ったものだと勘違いして食べちゃった訳か。 でも、骸からのものと言えばもう口にしないし見ることさえ嫌がるだろう。 私はクッキーをほんの一欠けらだけ取っておいて残りは鞄へとしまった。 ≪ユウヤッユウヤッ≫ 「……」 ≪スキッダイスキッユウヤ…ッ≫ 『……(可愛い…)』 「珍しいね、由夜の所に行くなんて」 『さぁ、ただの気まぐれじゃない』 「……」 『…またクッキー、食べる?』 ≪タベルッタベルッ≫ end |