風さんと食事した翌日、私は朝から応接室へと直行!
慌しくドアを開けて、目的の人物の元へとやって来た。



『雲雀先輩、雲雀先輩!!』

≪ヒバリッヒバリッ!!≫

「二回も呼ばなくても聞こえてるよ」

『す、すみません…!!』

「おはよう、奈都。……で、何?」

『あ!おはようございます!えっと、その!』

「ん…?」

『雲雀先輩って弟さん、いますか!?』

「は………?」

『弟さんじゃなかったら隠し子!』

「何…?」

『いないんですかっ!?』

「隠し子なんている訳ないだろ」

『違います!それはちょっとした冗談です!弟さんですよ!』

「……」

『………』

「…………さぁ、知らない」

『知ら……っ!?あっ!まさか、生き別れた弟さん!?』

「話がまったく見えないんだけど、何なの」

『雲雀先輩!この間、弟が欲しそうでしたけど、実はいるかもしれませんよ!』

「多分いないし、いらないよ。それより、はい、これ…」

『え…?』

「下らない事を言ってないで仕事して」

『………はーい』



呆れた雲雀先輩に書類をいつもの二倍、渡されちゃった。

自分の席に大人しく座り雲雀先輩を見る。
改めて見ると風さんと雲雀先輩って、本当にそっくり。

兄弟です!って言っても絶対にばれないよ!



『……』



そんな事を考えながら雲雀先輩を見つめていると、私の視線に気づいたようで話しかけてくれた。



「今度はなに?」

『あ…、やっぱり似てるなぁって思いまして!』

「似てる…?何に?」

『昨日、雲雀先輩似の赤ちゃんに会ったんですよ!風さんっていうんです』

「ふぅん……」

『すごくしっかりしてて、でも、麻婆豆腐が辛くて泣いちゃって…』

「僕に似ている赤ん坊、ね。…気に入ったのかい?」

『気に入ったって、物じゃないんですから!でも、すごく可愛いかったです!』

「……そう。なら、いつか君のものにしてあげる」

『だから、風さんは物じゃないですよ!』

「………他の意味を考えなよ」

『他の意味?』

「……、…何でもない。コーヒー入れて」

『あ…、はいっ!!』

「……(まだまだ先が長そうだね、まったく)」

『雲雀先輩!ブラックでいいですか?』

「………」

『雲雀先輩?』

「ん…?」

『ん?じゃなくて!聞いてました?』

「聞いてなかった」

『そんな素直に聞いてなかったって言われると何も言えないんですけどーっ!!』

「ふ…、…で、何だい?」

『だから!ブラックでいいですかって聞いたんです!』

「任せるよ」

『じゃあー、お砂糖ミルクたっぷりで』

「咬み殺すよ」

『冗談です!すぐに入れますから待っててください!』

「うん…」

『……あ、ヒバードのご飯も用意しないとね!』

≪ゴハンッゴハンッ!!≫

「……、…でも」



…ー…こんな風に過ごすのも悪くないな。



『あれ…?今、何か、言いました?』

「……、…言ってないよ」

≪コンナフーニッ!!スゴスッ!!ワルクナイッ≫

『ヒバード…?』

「覚えなくていいから」

≪ヒバリッヒバリッ!?≫

「雲雀先輩?」

「二人して見ないでよ。さっさとコーヒー入れて仕事しないと咬み殺すよ」

『わ…っ、は、はーい!!』



むっとして「咬み殺す」って言うけれど全然、怖くない。
背中を向けてくすっと笑ってコーヒーを入れた。

ミルクを一つ、お砂糖二つ。
いつもよりも少しだけ甘いコーヒーだったけど、雲雀先輩は気にってくれたみたいで文句を言わずに飲んでくれた。



end



2011/08/20

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