「……?おや、大丈夫ですか?」

『………』

「そこのお嬢さん」

『え…っ、わ、私……ですか!?』

「えぇ、買い物袋から野菜が……」



目の前にはリボーン君と同い年くらいの男の子。
荷物を落とした私に気がつくと、ちょこちょこと歩いて転がった野菜を小さな手で拾って渡してくれた。

私も慌てて野菜を拾っていると、その子も手伝ってくれる。



『……』

「………?」



至近距離になると、ついついじっと見つめちゃう。

だって、見れば見る程、そっくりなんだもん!
黒髪にまん丸の頭、つり目にへの字の口……、並盛中風紀委員長の雲雀先輩に!



「どうかしましたか」

『へ…っ、いや…あの……』

「……?」



まさか、雲雀先輩の弟さんだったりする…!?
再び凝視をしていたら、くすくすと笑われてしまった。



『……!』



か、可愛い!
すごく可愛い…っ!!

雲雀先輩の子どもの時ってこんな感じかな?

雲雀先輩って昔からあんまり笑ってないようなイメージがあるけど、さすがに小さい頃は無邪気だった時代あるよねっ!?



『………』



あ……、ある、かなぁ?

ミニトンファーを両手に幼稚園や小学校を征服してるようなイメージは不思議なことに簡単に思い浮かぶのに、無邪気な子ども時代が全然、想像できないよ…!



『……』



いや、ある!あった!
あったと信じてますよ、雲雀先輩!



「…そんなに私が誰かに似ていますか」

『え……!?』

「あなたは沢田奈都さん、でしょう?」

『な、何で私の事を知ってるんですか!?』



雲雀先輩に似てるからか反射的に敬語になっちゃう。

いや、でもでも!
こんな礼儀正しい赤ちゃんに対して友達感覚で話すなんてとても出来ない…!!



「イーピンからの便りに同封されていた写真で拝見したんです」

『イーピンちゃんからのお手紙、ですか?』

「私の名前は風、イーピンに師匠にあたります」

『え……っ、師匠さん…!?』



風と名乗る男の子は"イーピンがお世話になっています"と言ってぺこりとお辞儀をした。

こんなに小さいのに、師匠ってどういう事!?

あっ!もしかして何かの「ごっこ」でもしてるのかな?



「以後、お見知りおきを、奈都さん」

『は、はい!こ、こちらこそよろしくお願いします!』

「ふふっ、はい…」

『……』



にこっと笑ってから、くりくりした目で見つめる風さん。

本当に可愛いなぁ…!!
あまりに可愛くて、顔が綻んじゃう!

微笑む私を見て風さんも同じような表情をしている。

ほのぼのした雰囲気にほっと和んでいると、イーピンちゃんやランボ君といる時の癖が出てしまい、気がついたら風さんの頭を撫でてしまった。



「おや……?」

『あ!す、すみません、つい…!』

「…いえ、大丈夫です、イーピンにもこうしてくれているのでしょう?」

『は、はい…』

「あなたのおかげで故郷を離れていても寂しい思いをしていないようです、ありがとうございます」

『い、いえいえ!むしろうちに来てくれて賑やかで嬉しいです!』

「ふふ……」

『あ、そうだ!あの…』

「はい?」

『その…、よかったら夕飯、食べに来ませんか?』

「え……?」

『イーピンちゃんの様子、気になりませんか?』

「……そう、ですね。ですがいいのですか?いきなりお邪魔して…」

『大丈夫です!』

「…でしたら、お言葉に甘えることにしましょう」



こうして風さんは今夜、我が家で夕飯を食べる事になった。
お菓子を買うためスーパーに寄ってもらってから一緒に我が家に向かう。

今日のメニューは中華料理!
風さんの口に合うといいなぁ!



「いただきます」

『いただきまーす!』



せっかくの食事だけど、風さんはイーピンちゃんに自分だと気付かれたくないらしく変装をしていた。

どんなに変装しても、ばれると思うんだけど本人がいいのなら、そっとしておこう。
それにしてもリボーンちゃんといい、変装ごっこが流行ってるの?



「ちょっ、奈都姉!誰なんだよ、あの変な人!」

『ツナ!変な人とか言わないの!イーピンちゃんのお師匠様だよ』

「えぇっ!?イーピンのし…っ」

「騒ぐんじゃねぇ、ツナ」

「リ、リボーン!」

「イーピンに気づかれたくねぇから風は変装してんだぞ」

「リボーン!お前、知ってんのか!?」

「あぁ、アルコバレーノの一人だ。昔からの知り合いなんだぞ。」

「アルコバレーノっ!?」

『なんだ!リボーン君のお友達だったんだね!』

「あいつは拳法の達人なんだ」

『へぇ、すごいんだー…って、あれ!?何か泣いてるけど!?ど、どうしたんですか!?』

「……っま」

『ま?』

「麻婆豆腐が……」

『もしかして、苦手でした!?』

「大好きなのですが、辛いと涙が止まらなく…っ」

『あぁっ!!だ、大丈夫ですか!?』



辛い麻婆豆腐をうっかり食べてしまった風さん。
真っ赤な鼻にうるうるした瞳は年相応な雰囲気。

くすくすと笑って涙を拭いてあげると風さんは照れくさそうにしていた。
落ち着いたところで食事を再開。

商店街で出会った赤ちゃん、風さんはしっかりしているけれど、とっても可愛い男の子だった。

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