奈都姉は風紀委員の仕事があるから、いつもより早く家を出て行く。

オレも奈都姉に合わせて早く起きて余裕余裕!と思っていたのに朝食を食べる時間はなく、ベタながらトーストを一枚くわえて家を出た。



『ツナ、今日は早起き出来たんだから家でゆっくり食べてくればいいのに。どうしたの?』

「ははっ、ちょっとね!奈都姉と一緒に学校、行きたくて」

『え……』

「……?」



"え……"って、何なんだ、その疑わしい顔は!!
いつもなら「そんな事を言ってくれるなんて嬉しい!」なんてくっついて来そうなのに!

まさか昨日の事があったから警戒してる!?
オレにマフィアだってばれないようにしなきゃって!?

やっぱり奈都姉もマフィア関係者!?
というかボンゴレ関係者!?



「ど、どうしたの、奈都姉」

『それはこっちのセリフだよ!ツナからそんな素直な言葉が出てくるなんて!』

「えっ?」

『ちょっと前なんて学校では他人のふりしようとか言ってたのに』

「他人のふりだなんて言ってないだろ!?話すのをやめようって言っただけだって!」

『そうだったっけ?』

「そ、そうだよ!というか結局、学校でも普通に話してるし!」

『でも、最近は私、応接室いるのが多いから、あんまり話せてないよね』

「う、うん…、そう、だね…」

『…あ、分かった!』

「な、なに!?」

『一緒にいる時間が少なくて寂しいんでしょ!ツッ君ってば、可愛いんだから!』

「んなーっ!?ち、違うって!!」

『またまたー!照れなくてもいいよ!』

「あぁ、もう!オレ、やっぱり先に学校、行くからーっ!!」

『あ、ちょっと!ツナ…!』

「…〜…!!」

『……』

「……、…あ。」

『ん……?』

「……」



ダッシュで奈都姉を追い越したけど、ふと、ピタリと止まる。

だめじゃん、さっそく離れるなんて!!
今日は奈都姉を調査するんだから、なるべく傍にいないと!



『追いついちゃったよ、ツナ』

「うわぁぁ!?」

『何、驚いてるの?というか、大丈夫?』

「だ、大丈夫……」

『そう?』



きょとんとしている奈都姉。
双子だけど、どうも考えが読めない奈都姉をジッと見つめると、にこっと笑ってオレの手に触れた。



「えっ!?な、なに!?」

『転ぶといけないから手、繋ごっか、ツッ君!』

「恥ずかしいからやめてよ…!あっ、こら!手を握るなって!」

『いいじゃない、早いから並中生はいないよ』

「並中生がいなくても周りに人いるだろー!?」



サラリーマンやOL。
道端で騒いでるオレ達を微笑ましそうに横目で見ると、くすくすと笑っている。

決して手を繋ぐのが嫌な訳じゃない。

ただ恥ずかしいんだ。

だってそうだろ!?
普通は中学生にもなって姉弟で手を繋がないだろ!?



『ツッ君?』

「…ー…っ」



ツッ君とオレを呼ぶ奈都姉は九割からかっている時。
今も一人で照れてるオレをからかっているに違いない。

恥ずかしい。
めちゃくちゃ恥ずかしいけど……。

あぁ、もう!これくらい我慢だ、我慢!



「じゃ、じゃあ……い、行こうか、奈都姉」

『えっ?このまま?』

「だ、だって繋ぐんだろ?言っとくけどオレは転ばないけど!!」

『……』

「どうしたんだよ、奈都姉」

『いつものツナなら、恥ずかしいからやめてよ!!って、一人でスタスタ歩いて行っちゃうんだろうなーって思ってたから…』

「へ……?」



予想が当たって、オレをからかっていたらしい奈都姉。
手を繋いで行くことを了承したら、驚いていた。

からかう事が失敗したのに残念そうな様子はなく、どこか様子がおかしい。
ふと、オレは奈都姉が言った言葉が気になった。



「……」



一人でスタスタ歩いて行っちゃうんだろうなーって思ってたから、って、どういう意味だろう。

まさかオレが一人で学校に行くように仕向けたんじゃ…?
やっぱり警戒してる…!?

普段は何気ない事も今日は怪しい。怪しすぎる。
奈都姉もボンゴレの関係者なんじゃないかって思えてきた。

もう、思い切ってはっきり聞いちゃった方がいいんじゃ…?



「あ、あの、奈都姉…」

『ふふっ、でも、何だか嬉しいなぁ』

「え?」

『…ツナと手、繋ぐの』

「……っ」



ちょっ、何、その眩しい笑顔はー!!

うっかり、ドキドキしていると手をぎゅっと握られた。

まるで心臓を鷲づかみされたような感覚になり、ドキドキしすぎてちょっと息が苦しい。



「…ー…っ(って、何で実の姉にこんなにドキドキしてるんだよ、オレ!)」

『もう学校、着いちゃうね』

「そっ、そう、だね…」

『どうしたの?ツナ、さっきから変だよ』

「いや、何でも、ないよ…」



誤魔化すように笑う。
数分、二人で話しながら歩いていると、すぐ学校に着いてしまった。
ある事を思って下駄箱で立ち止まると無意識に奈都姉の手を握り俯いた。



「……」

『ん?』

「…ー…っ」

『どうしたの?上履きに履き替えないの?』

「……」



これからどうしよう。
奈都姉は教室には寄らずに応接室に行くんだよな?
本当なら雲雀さんが怖いから行かせたくないのが本音。

だからと言ってオレが応接室について行ったら雲雀さんに咬み殺される。



「ねぇ、君達、朝から群れていいと思ってるの?」



そうそう、そんな風に言われるだろうなぁ。
ギロッと睨まれて低い声で咬み殺すよってトンファーを出してさ!
あぁ、想像しただけでも身体がガタガタ震えそうだよ…!!



「ねぇ、聞いてるのかい、草食動物」

「……へ?」



顔をあげたら、そこには雲雀さんが口をへの字に曲げてオレを睨んでいた。
奈都姉は怖がることなく元気に「おはようございます!」と挨拶をしている。



「やぁ、奈都。」

『雲雀先輩、今朝も早いですね!私が一番だと思ってたのに!』

「なら、もう三十分は早く来ることだね」

『そんなに早く来てるんですか!?』

「まぁね」

「本物の雲雀さんご登場ーっ!?ひぃぃーっ!!」

「君、さっきから何なの。煩いんだけど。」

『さっきから、おかしいんですよ』

「ふぅん…」

『ツナ、具合でも悪いの?』

「え…っ、あー…、その…」

「……」

「…〜…ッ!?」



見てる、めっちゃ見てる。
雲雀さんがオレと奈都姉の繋いでいる手を見てるーっ!!

あぁ、オレの想像力がいかに貧困か思い知らされるよ…!!
想像よりも遥かに怖いんですけどぉぉーっ!!

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