応接室で書類の整理。
ずっと座りっぱなしだったから肩が凝り、うーんと背筋を伸ばす。
風紀委員に入ってから妙に肩が凝るんだよね。
こういう作業は苦手って訳じゃないけど根を詰めすぎなのかな。



「奈都、終わったかい」

『あっ、はい!終わりましたよ、って!雲雀先輩、何をしてるんですか』

「肩こりが酷くてね、見ての通り電気マッサージ器」

『それ、効くんですか?よかったら肩もみしますよ!』

「君が?」

『もちろんです!お父さんによくやってましたから!』

「…それじゃ、頼むよ」

『任せてください!』



立ち上がって雲雀先輩の方へと歩くと、ヒバードは休憩するのかと思ったのか私の肩へと移動。
ずしっと感じる重み、その時、違和感にやっと気づいた。



『あれ…?』

「……どうしたんだい?」

『ふ、太った…!?』

「太った?」

『ちょっ、そんなに見ないで下さい!私じゃないですから!』

「……」

『ち、違いますよ、私じゃなくて…っ』



「太った」と言った私の体を下から上へと見てハテナマークを浮かべた雲雀先輩に慌てて訂正をした。
実は私も帰国してからお母さんのご飯が美味しくて食べ過ぎたり、草壁さんが応接室に差し入れしてくれたケーキを食べて少しだけ太ったけど!

あぁ、少し、ダイエットしないとなぁ…!!

思わず憂鬱にため息を吐く私を見ながら「それじゃ誰が?」と雲雀先輩は聞き返してくれた。



『ヒバードです』

「……は?」

『だから!ヒバードですよ!』

「……」

『あーっ!今、くだらないって思いました!?これって意外と重大なんですよ!?』

「一応、聞いてあげるよ」

『肩が凝ります』

「……」

『本当ですよ!?ほら、ヒバード!雲雀先輩の頭に乗っかって!』

≪……?≫



空中に飛ばせるとパタパタと雲雀先輩の頭へと乗っかった。
少し前だったら雲雀先輩の頭に、ぽふっと軽く乗っていたのに、今はボフッ!って感じ。



「……ワォ」

『ヒバード、太りましたよね!?』

「……確かに、重くなったような気がする」

≪…?≫

「最近の肩こりの原因は君か」

≪ヒバリッヒバリッ≫



雲雀先輩は頭からヒバードを下ろす。
私達の視線は机の上のヒバードに集中する。
ヒバードはくりくりとした可愛い目で私達を見て首を傾げていた。



≪ナツッナツッ、ヒバリッヒバリッ!?≫

「奈都、何か余計なものを与えてるのかい」

『何もあげてないですよ、普通の小鳥の餌を決まった時間に決まった量だけ…』

「じゃあ、なんで…」

『うーん、外で虫や木の実とか食べてるとか、ですかね?』

「それはないよ、ここ最近、ずっと離れてない」

『……という事は』

「何?」

『離れてないって事は、移動は私の肩や雲雀先輩の頭に乗ってるって事ですよね…?』

「……そうなるね」

『最近、飛んでるところ、あんまり見ないな、とは思ってました、けど…』

「………」

『……』

≪……?≫



私と雲雀先輩の視線が重なる。
そして数秒、アイコンタクトして同じタイミングでヒバードへと視線を戻した。
ヒバードは私達の考えている事が分かってないみたいで毛づくろいをしている。



「こんなに丸くて、よく飛べるものだと思っていたけど…」

『最近、丸さに磨きがかかってますよね』

「毛づくろいしながら、そのまま転がるんじゃないの」

『ありえそうですね、はは…』

「……ねぇ、奈都」

『何でしょう…?』

「仕事あげる」

『……ヒバードを痩せさせろ、ですか』

「もちろん。」

『でも、どうやって?鳥のダイエットなんて聞いた事ないんですけどー!!』

「簡単だよ。肩や頭に乗せずに飛ばせてれば自然と体重が落ちるよ」

『……』

「最悪、君が走ってヒバードについて来させるとか」

『よく犬と一緒に走ってる人を見かけます、あんな感じですか…?』

「そう。君もダイエットが出来て一石二鳥じゃない」

『なっ!?何で知ってるんですか!?』

「ワォ、当たりかい。通りでさっき、妙に慌ててた訳だ。」

『……っ』

「まぁ、僕は別に気にしないけど」

『えっ?』

「好きなものは遠慮せず食べてればいいって事。冷蔵庫にケーキあるから食べれば?」

『な、何か私がものすごーく食べるみたいな言い方じゃないですか…っ!!大体、雲雀先輩、細すぎなんですよ…!!』

「僕?」

『そうです…!!何でですか!そんなに細くてどこからあんな強さが!!』

「僕と手合わせするかい。いい運動になるよ」

『心の底から遠慮します…!!』



雲雀さんと手合わせなんて、いい運動になるだろうけど体力がもたない!!
だからダイエットは無難にマラソンに決定。

こうしてヒバードの……いや、私とヒバードのダイエット大作戦が始まった。

毎朝、並盛指定ジャージを着てヒバードと一緒に町内マラソン。
ヒバードは私が走ると、その上空を校歌を飛んでついてくる。

すごく恥かしいけど一人じゃないから大丈夫!



「ていうか、奈都姉!何でオレも一緒にマラソンー!?」

『いいじゃない!一緒に走って体力を作っておいた方が!』

≪ミードリータナービクー≫

「校歌BGMにして並中ジャージでマラソンなんて、めちゃくちゃ恥かしいんだけどー!!」

『私だって、さすがに恥かしいよ…!!でも、二人なら何とかなる!』

「ひぃぃ、巻き添えー!!」

『これだけ走ったらきっと朝食も美味しいよ!』

「そうだろうけどさ…」

『家に帰ったら美味しい朝食が待ってる!よし、競争開始!』

「ちょ、待ってよ、奈都姉ー!!」

≪ツナッマケッマケッ≫

「ちょ、ヒバードも待てってばー!!」



これを繰り返して二週間。
二週間も経てばヒバードの体型はすっかり元通り!
ヒバードの体型が元に戻って私と雲雀先輩は肩こりから解放されたのは、よかったんだけど……



『な、何で?どうして!?あんなに走ったのに私の体重は変わらないのーっ!?』

「……」



私の体重は変わりなかった。
ツナは体重計に乗って嘆いている私を苦笑いして見ている。



「あー…、その、奈都姉…」

『……なに?』

「…いや、何でもない」

『言って。早く。』

「……ッ!二週間じゃそこらで体重なんて変わらないんじゃないのかなーって思って!!」

『……』

「はは…っ(…本当は走った分、朝ご飯をがっつり食べて学校に行くからじゃないの、なんて恐ろしくて言えない!)」

『……っツナは!?』

「えっ、オレ!?」

『そう!ほら!体重計に乗って!』

「オレは変わりないと思うけど……」

『……』

「あっ、一キロ、痩せてる…」

『ちょっ、ツナの裏切り者ーっ!!』

「ひぃぃ、そんな事、言われてもーっ!!」



結局、ヒバードとツナは痩せて私だけ少しも変わらないという結果になり、私のダイエット大作戦は失敗に終わったのでした。



end



2009/07/05

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