あれ?何で俯いちゃったんだろう?
不思議に思い顔を覗き込むと獄寺君はプルプルと震え力強く拳を作っていた。



『ごっ、獄寺君、どうしたの…!?』

「奈都さん!!」

『は、はい…っ!?』

「…ー…ッ」



バッと顔を上げた獄寺君。
うるうるした瞳で真っ直ぐに見つめられると妙に嫌な予感がして背中に冷や汗。
私、何か余計な事を言っちゃった…!?

何を切り出されるのかドキドキしながら獄寺君を見つめると、彼は素早く一歩下がって見事なまでに綺麗な土下座を披露した。



「本当にすみませんでした……ッ!!」

『えぇ…っ!?』

「オレは何て事を…!!十代目のお姉様のお心を理解出来ず大馬鹿女だなんて…ッ!!」

『ちょっ、あの!獄寺君!!もう謝らなくていいから!』

「いいや、ダメです!!」

『……!!』

「オレ、いつかちゃんと謝ろうと思ってたんです…!!なのに、すっかり忘れていて…!!」

『ひぃぃ…!!』

「すみませんでした、奈都さん……!!」



玄関の前でガバッと土下座をして何度も頭を下げる獄寺君。
勢い良すぎてガンガンと床に額を打ち付けてしまっている。



『だ、大丈夫だよ!全然、気にしてないから…!!前にも謝ってくれたじゃない!?』

「ですが……っ」

『私もついカッとしちゃったし!」

「それはオレが悪かったんです…!!」

『あぁ、ほら!あと!耳たぶアホ男なんて言っちゃってごめんね!?私の方こそ、いつかちゃんと謝ろうと思ってたんだ…!』

「それだって原因はオレです…!!オレがまだまだ未熟でしたから…!!」

『違うよ!獄寺君は立派にツナの右腕……だっけ?頑張ってくれてるんでしょ!」

「奈都さん……」

『あの時は私も悪かったんだよ!だから土下座なんてやめて?』

「……」

『顔、というかおでこ汚れちゃってるし…、ね?』

「…ー…っ」



土下座している獄寺君。
しゃがみ込んで同じ視線になるとハンカチで赤くなった額を拭く。

あぁ、弟のツッ君よ。
獄寺君にこんなに慕われるなんて一体、君は何をしたのよ。
今更ながらそこの所を詳しく聞きたい。



「…ー…す、すみません、ハンカチを汚してしまって」

『使うためにあるんだから謝らないでいいよ、うん、よし!綺麗になった!』

「あ、ありがとう、ございます…」

『気にしないで!あっ、そうだ!朝ごはん食べてきた?』

「えっ?いや、購買で買おうかと…」

『だったら、うちで食べていかない?』

「な…っ朝からお邪魔するなんて悪いっス…!!」

『悪いなんてそんな事ないよ、友達でしょ?』

「え……」

『ん……?』

「と、友達っスか…?」

『そう!ツナの大切な友達だから、私も友達じゃだめ?』

「……!!」



獄寺君は一瞬、驚いた顔をして、また俯いてしまった。

あ、あれ?私、また変な事を言っちゃった?
十代目のお姉様って認識されてても私は友達と思ってたのに。

私だけだったかな、友達だと思ってたのは…!!



『ご、獄寺君?おーい、今度はどうし……』

「奈都さんっ」

『えっ!?』



どうしたの?
そう言おうとした私の言葉を遮って名前を呼んだと思ったら両手を掴まれた。
顔をあげた獄寺君の瞳はキラキラと輝きで満ちている。

この表情、まるで態度が急変した、あの時のよう。
あぁ、また嫌な予感が……!!



「オレなんかの事を友人と思ってくれてたなんて嬉しいっス!感激です!!」

『ご、獄寺君…』

「十代目の右腕として奈都さんの一番の親友として、これからもよろしくお願いします!!」

『えぇ…っ!?』



友達通り越していきなり一番の親友になってるー!?

キラキラした雰囲気、暴走する獄寺君は、もう誰も止められない。
どうしようどうしようと考えていれば後ろから声をかけられた。



「奈都姉達、何やってんのーっ!?」

「獄寺の声、近所に丸聞こえだぞ。朝から煩ぇな」

『ツ、ツナ!リボーン君!!』

「十代目!リボーンさん!おはようございます!!」

「お、おはよう、獄寺君…!ごめんね、待たせちゃって…」

「いえいえ!これくらいどうって事ないです!むしろ朝からお邪魔してすみません!」

「あっ、そうだ!」

「何ですか?」

「よかったら朝食、食べていかない?」

「じゅ、十代目まで…!!」

「ど、どうしたの!?」

「く…っ!オレは幸せ者っス!!お二人に一生ついていきます!!」

「えぇっ!?ちょ、奈都姉!獄寺君に何を言ったんだよ!?」

『あー…いいじゃない!仲良くなれたって事で!』

「納得、出来ねーっ!?」

「それにしても奈都さんは、やはり十代目のようにお心が広いですね、うちの姉貴とは大違いですよ」

『えっ!?獄寺君ってお姉さん、いるの!?』

「奈都は知らなかったな。獄寺の姉は…」

「リボーン!玄関にいたのね、早くしないと朝食が冷めてしまうわ。」

『あっ、ビアンキさん!』

「ゲ…ッ!?」

「あら、隼人、来てたのね」

「……っ」

「調度よかったな。獄寺の姉登場だぞ」

『えっ!?ビアンキさんが獄寺君のお姉さん!?そうだったの!?』

「…ー…っ」

『獄寺君?』

「く……ッ」

『ちょ、獄寺君ーっ!?』



ビアンキさんを目の前にしてパタンと倒れてしまった獄寺君。
何でも幼少の頃のトラウマからお姉さんのビアンキさんを見ると腹痛が起きるとか。

慌ただしい一日の始まり。
だけど獄寺君の事を知れて仲良くなれてよかった。

そう思う朝だった。



end



2009/3/20

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