チュンチュンと雀の鳴き声に眩しい陽射し。

ツナの双子の姉こと私、沢田奈都はお母さんの手伝いで朝食を作っていた。

朝は焼き魚に卵焼き、お味噌汁、何とも日本らしい朝食。
これだけでも日本に帰って来たんだなぁって実感する。

あっ、そろそろ、ツナを起こさないと!
そうと決まればさっそく行動!
リズムよく階段を上がりツナの部屋へ直行。

そしてカーテンをサッと開けた後、勢いよく布団を剥がした。



『ツナ!ねぇ、ツッ君!いい加減、起きなさい!朝だよ、朝!』

「あと五分……」

『……朝食、ランボ君達がツナの分も食べてるからね、それじゃ!』

「えぇ…っ!?」

『嘘!』

「な……っ」

『でも、早くしないと本当に朝食抜きかもよ?』



そう言って笑うとツナは渋々、起きた。

慌てて起きて着替えるツナが面白くて、つい毎朝からかっちゃう。
私はツナと一緒に「いただきます」がいいから、ちゃんと待ってるのに。

からかえば、いつも期待を裏切らない予想通りの反応で嬉しい。



「奈都姉!き、着替えてるんだから出てってよ」

『はいはい。出て行くからちゃんと着なさいよ?道端や学校でパンツ一丁になるのはやめて』

「あれはリボーンが…っ」

『下に行ってるねー!』

「ちょっ!!話を聞いてってば!」



奈都姉ぇぇー!って必死に呼んでるけど私は構わず一階へ。
弟が突然、パンツ一丁になる言い訳なんて聞きたくないし、そもそもよく分からないもんね。

そういえば「よく分からない」で思い出すのは、あの人。
何となくだけど、そろそろ「あの人」が来るような気がするなぁ。



「おはようございます!!十代目ー!奈都さーん!!」

『……!!』



噂をすれば何とやら。来たよ、来た。
ツナは「十代目」って呼ばれてるからいいとして、お願いだから朝一に私の名前を大声で叫ばないで…!!



『……』



並盛に来てから私の中でよく分からない人ランキング二位の獄寺隼人君。

フゥ太君に占ってもらったんだけど一位は雲雀先輩らしいから当てずっぽうでランキングしている訳じゃないと思う。

風紀委員長なのに風紀を乱したり雲雀先輩もよく分からないけど、獄寺君もまだよく掴めない人。

不良っぽくて、いかにもツナをパシリに使ってるっていうのが第一印象。
今ではよく躾された犬みたい。

最初は「大馬鹿女」って言われて喧嘩を売られた。
だけど今では「十代目のお姉様」に格上げされてる。

ツナの事を大切に思ってくれて悪い人じゃないって事は分かるんだけど獄寺君が頑張ると、その分、ツナに何か良くない事がある気がするんだよね。

気遣い優しさがぶんぶん空回りしてるっていうか……



『気のせいかなぁ…』

「ナッちゃん、獄寺君が来たみたいだから出てくれるかしらー?」

『あ…、うん!』



つい考え込んじゃって待たせちゃったよ…!

怒ってないかな?と思いつつ玄関の扉を開ける。
だけど、そこには嫌な顔を少しも見せずに、元気よく挨拶をする獄寺君がいた。

出会った当初の獄寺君なら絶対に「待たせるんじゃねぇよ」って言いそうなのになぁ。



「おはようございます!!奈都さん!!」

『おはよう、獄寺君、早いねー!』

「あっ!朝早くからすみませんっス、ちょっと早く来すぎました?」

『大丈夫だけど、まだツナが準備、出来てなくて……、よかったら上がらない?』

「大丈夫っス!外で待ってます!」

『そ、そう?』

「はい!」

『……』



ニカッと笑う獄寺君。
第一印象の不良っぽさなんてまったく感じられない。

それにいつも思う。
同級生に敬語を使われて「さん」付けされるなんて、やっぱり慣れない。

山本君なんて呼び捨てで呼んでくれるし気軽に接してくれるのに。



『ねぇ、獄寺君』

「なんスか?あっ!奈都さんもゆっくりで全然、構わないですから」

『そうじゃなくて!そのー…』

「奈都さん?」

『その…、奈都さんって呼ぶのやめない?なんて…』

「それじゃ、やっぱり奈都姐さんはどうっスか!?」

『は……!?』

「いやぁ、風紀委員の奴らが馴れ馴れしく呼んでるじゃないですか!だったらオレも!と思いまして」

『あ、はは……、姐さん呼びもちょっと遠慮したいなぁ…』



確かに獄寺君の言う通り風紀委員の人達に勝手に「奈都姐さん」って呼ばれてるけどね。

苦笑いしてる私を気にせず、獄寺君は風紀委員の事を話題にしてる。

雲雀先輩とは大分、会話が噛み合うようになったけど獄寺君とはまだまだ噛み合わないよ…!!



『えっと、奈都さんも奈都姐さんもやめて、普通に呼んで?…ね?』

「普通にですか?」

『そう!』

「普通……」

『奈都でいいよ!』

「んなっ!?そんな恐れ多いっスよ!」

『敬語もいいから!あっ!いっそ私を山本君だと思って接してよ!』

「奈都さんを山本だと思って……って!んなの、絶対に無理っス!!」

『いいから!ほらっ!!出会った頃みたいに大馬鹿女って言うくらいの勢いで構わないから!』

「……ッ!!」

『それくらいの方が獄寺君らしいしね!』



そう付け足して笑えば獄寺君は俯いてしまった。

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