昨日は遅くまでリボーンにねっちょりと宿題をやらされた。
だから、今日こそはのんびりするって決めたんだ!

一度、目覚ましに起こされたけどそう決意して布団に潜り込む。
まだ七時少し前。

あと二時間くらい寝よう。



「……」



いつもは早朝からランボやイーピンが煩いのに今日は静か。
リボーンや奈都姉が来てから、こんなに静かな朝、久しぶりな気がする!

あぁ、幸せだ。
二度寝、最高!!



「……(…でも)」



少し静かすぎる。
奈都姉も起こしに来ないのもおかしい。
普段だったら欠かさず起こしに来るのに。

まさか朝早くから出かけたとか?オレをおいて?

さ、さすがにそれはないよな?
奈都姉がオレをおいていく訳ない。

……多分。



「………」



でも、もしかしたら、ありえる事かもしれない。
だとしたら一体、誰と?獄寺君?山本?
それとも雲雀さん?

あぁ、もう!ダメだ、ダメ!一度、考えちゃったら気になって眠れない!
すっかり目が覚めちゃったよ!



「起きるならさっさと起きればよかった…」



背筋を伸ばして欠伸を一つ、オレは着替えて階段を下りる。
一階では母さんが忙しそうに洗濯をしてるけど、そこにいつも手伝いをしている奈都姉の姿はない。

もしかして本当にオレを置いて出かけちゃった!?



「おはよう、ツッ君、お休みなのに珍しく早いわね」

「おっ、おはよう、母さん!ね、ねぇ!奈都姉は?」

「ナッちゃんなら、まだ寝てるんじゃないかしら?」

「えっ?珍しいね」

「昨晩、ランボ君達が中々寝付かなくて遅くまで見ててくれたのよ」

「そうだったんだ、ランボ達、よっぽど騒いでたんじゃ…」

「ねぇ、そろそろナッちゃんを起こして来てくれるかしら?」

「えっ、オレが!?」

「ツッ君しかいないでしょ?お願いね」

「あ…!か、母さん!」



そう言うと洗濯物を干しに庭に出て行った母さん。
ポツンと一人残されたオレは、この場で佇む事しか出来ない。

オレが起こしに行くの?奈都姉を…!?
何だか妙に緊張するんだけど!



「……ど、どうしよ」



二階の一番奥の部屋が奈都姉の部屋。
とりあえず、扉の前まで来たもののドアの前で立ち止まり数秒。
緊張しながらも思い切って扉をノックしたけど返事がなかった。



「まだ、寝てるんだ…」



ゴクリと喉を鳴らし控え目にドアを開けて中を覗く。

姉弟だし、やましい気持ちはないけど奈都姉だって女の子。
今まで離れて暮らしてたから余計に緊張する。

思えばまともに奈都姉の部屋に入るのは初めてだ。



「奈都姉ー…?って、えぇ!?」

「ランボさん、もうお腹一杯だもん…ね…」

「◎▲□……♪」

「んー…ランキングブックー…」

「すぴーすぴー…」



奈都姉しかいないとばかり思っていたのにランボにイーピン、フゥ太。そしていないと思ってたリボーンまでいた。

何で皆、ちゃっかり奈都姉の所で寝てるんだよ!!

それにリボーン!!
最近、朝、起きたらいないと思ってたけど、ここで寝てたのか!?



「奈都姉!フゥ太達も起きろー!」

「んー…あと五分…」

「起きろってば!ついでにリボーンも!」



割と大声なのに皆、起きやしない。
オレを起こしに来る奈都姉の気持ちが分かった気がした。
どうしたら起きるんだろうと思いながら、ふと奈都姉が使っている二段ベッドに手をかけた。

奈都姉が使ってる二段ベッド。
上はフゥ太とランボ、下は奈都姉とイーピンが使っていた。
まだ、ぐっすり眠ってる。



「懐かしいな…」



フゥ太達が使ってる所、昔はオレの場所だったんだよな。
上がいいって駄々こねて奈都姉は下でいいよって言ってくれたんだっけ?

だけど上になったらなったで高いのが怖くて眠れなかったオレ。
そんなオレに気づいて奈都姉は一緒に眠ってくれたんだ。

いつの間にかいなくなっちゃって、二人で使っていた、この部屋が広くなりすぎた。
それが嫌で今の部屋に移ったんだ。



「でも、今は広く感じないや…」



奈都姉が帰って来た、って言うのが一番の理由だけど、この部屋の人口密度無駄に濃いもんな。
狭い部屋なのに何人で寝てるんだよ、ここ!



「奈都姉……」

『ん……』

「……っ!」

『……』

「起きた…?」

『………』

「何だ、寝言か…」



幸せそうにぐっすり眠っているのを見ると自然に頬が綻ぶ。
奈都姉の髪をサラリと撫でれば、くすぐったそうにして布団をぎゅっと抱き締めている。



「奈都姉……」

『……』

「……」

『………』

「…ー…奈都」



奈都姉の顔を覗きこんで、そっと名前を呼ぶ。

「奈都」なんて普段は絶対に呼ばない。
だから少し照れるけど、ぐっすりと眠る奈都姉が可愛くて、そう呼びたくなった。
いつも傍にいるけど今はもっと近い距離にいる。

イーピンを起こさないようにベッドに手をつけばギシッと小さく鳴った。



『ひ……』

「……?」

『ひばー……』

「え…?」

『……』

「雲、雀さん…?」

『…ー…ん』



奈都姉の寝言に驚いて動けないオレ。
何で寝言で雲雀さんの名前が!?というか夢にまで登場する程、仲がいいのっ!?



「……ッ」



……って、その前に何やってんだよ、オレ!!近い!近いよ!
いつの間にこんなに奈都姉の近くに!?
これじゃ、まるでキスしようとしてたみたいじゃないか!



「……っあいた!!」



慌てて勢いよく奈都姉から離ると二段ベッドに頭をぶつけて、よろけて尻餅をついた。
あぁ、もう!いい休日になるかと思いきや日曜の朝から、ふんだりけったりだ!



「いってー!!」

『あれ…?ツナ……?』

「奈都姉…!?」

『おはよう……って!嘘!もう、こんな時間!?』

「う、うん…っ!そ、そう!だから起こしに来たんだ!」

『ありがと、ツナ!ほら、皆も起きてー!朝だよ!』



時計を見て慌てて飛び起きる奈都姉。
イーピン、フゥ太、ランボ、リボーンを順に起こしていく。
オレの声じゃ全然、反応なかったくせに奈都姉の声だと続々と目を覚ますのは何で!?



『ツナ、どうしたの?目、まん丸にしちゃって』

「あっ、えーっと。そのー…」

『あっ!そうだ!』

「ど、どうしたの?」

『聞いて聞いて!夢、見ちゃったよ、夢!何と!ひばー…』

「…き、聞きたくない!」

『え……!?』



子供みたいに耳を両手でぎゅっと塞ぐ。
何で、そんなに嬉しそうに話すんだ!?
もしかしなくても雲雀さんの事が好きだから!?

雲雀さんが好きだなんて話されたら、オレ、立ち直れないよー!!



「……っ」

『ツナ?聞いてってば!』

「やっ、いいよ、いい!聞かない!寝言で言ってたし聞かなくても分かるよ!」

『えぇ!?私、寝言で言ってたの!?』

「そう!だから、そんな改めて話なんて…」

『……ねぇ、そんなに嫌いなの?』

「え…っ!?」

『だから!そんなに嫌いなの?ヒバードの事!』

「……は?」

『……?何、驚いてるのよ?』

「ヒバ…、…ヒバード?夢の話ってヒバードの事?」

『そうだけど?』

「……」



んなーッ!?
そういや「ひば」しか言ってなかった…!!
全部、オレの早とちりか…!!めちゃくちゃ恥かしいんだけどーっ!!



「はぁ、ヒバードの事だったんだ…」

『何の事だと思ってたの?』

「そりゃ、ひばー…。うん、ヒバードの事だと思ってたよ、もちろん!」

『嘘だー!!』

「う、嘘じゃないって!あっ!オレ、リビングに行ってるから!」

『なっ!?ツナ、待ってよ!』



そそくさと奈都姉の部屋から出て行くオレ。
後ろからは「正直に言いなさいー!」って奈都姉の声が木霊していた。



「……」



死んでも言える訳ないじゃん!
寝言で雲雀さんの名前を言ったと思った、奈都姉の好きな人が雲雀さんだと思った、なんて!

でも、風紀委員で一緒にいる時間は多いだろうし、怖いけど雲雀さんの事をかっこいいって女子が騒いでいたのを聞いたことがある。



「………」



あぁ、何だか急に色々不安になってきた…!!

今度、ちょっとだけ応接室をこっそり覗いて見よう。
雲雀さんはもちろんのこと、ヒバードも怖いけどね…!!



end



2008/05/30

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