私の名前は沢田奈都。 沢田綱吉ことツナの双子の姉。 日本に戻って来て早々、ひょんな事から雲雀先輩に目をつけられて風紀委員になってしまった。 そして風紀委員の仕事にも大分、慣れた頃、私が今いるのは並盛公園。 桜満開で春を強く感じる場所。 今日は風紀委員の集まりがあるからって雲雀先輩に呼び出されたんだけど…… 『これのどこが風紀委員の活動なんですか!?』 「花見をするからおいでって言ったでしょ」 『お花見…!?風紀委員の集まりって聞いたんですが!』 「そうだっけ?…でも、いいじゃない、暇だったみたいだし」 『そ、そりゃあ、まぁ……そうですけど…』 「昨日は風紀の仕事に追われててね、あんまり寝てないから煩くしないでよ」 『は、はい……』 って言っても今日に限らず、いつも騒いだら不機嫌なのに。 というか雲雀先輩、お花見というよりお昼寝に来たんじゃ…? ここでお昼寝したら気持ち良さそうだもん。 「………」 『……』 私と雲雀先輩の二人きり。周りに一般の人はいない。 学ランを着た他の風紀委員の人達は見張りをしているみたい。 まるで雲雀先輩と二人きりでお花見に来た感覚になって変に緊張しちゃう。 そう思ってた時、草壁さんがやって来た。 「委員長、お待たせしました!」 「あぁ、やっと来たね」 『あ…っ草壁さん、こんにちは!』 「少しお邪魔します。頼まれたものをお持ちしました」 『頼まれたもの、ですか?』 「えぇ、委員長に頼まれていたんですよ」 包みを開けると豪華なお花見弁当。 それと何種類かのジュースやお菓子が入っていた。 お花見には欠かせない飲食類。 「好みが分からず色々と買ってきたのでお好きなのをどうぞ。」 『あ、ありがとうござます』 「では、自分は見張りに戻ります、あ、奈都姐さんもごゆっくり!」 「あぁ、ご苦労さま」 『あれ?草壁さんは一緒にお花見しないんですか?って!姐さん…っ!?』 ツッコミを入れる間もなく草壁さんは爽やかに去って行った。 何で姐さんって呼ばれなきゃいけないのーっ!?なんて考えた時、ふいに冷たい物が頬に当たる。 『冷た…っ!?』 「間抜けな顔してないで、飲んだら?」 『い、頂きます…』 悪戯に頬に当てられた缶ジュースを受け取る。 雲雀先輩が缶ジュースを飲むなんて意外だな、と思いつつ喉がカラカラだったから私も一口。 『ん……』 「どうしたんだい」 『……!?』 味に違和感を覚えて飲むのを止めてジュースを見る。 一瞬、ジュースと見間違いそうなパッケージだけど、これは…!! 『これ、お酒ですよ、雲雀先輩!』 「………」 『…雲雀先輩?』 「ん?」 『………』 あぁ、ダメだ。もう既に飲んじゃってる。 風紀委員長が飲酒だなんて…! いつもの事ながら風紀委員が風紀を乱してどうするの…!! 私は酔いどれお父さんに度々、日本酒を無理矢理、飲まされてたから平気みたいだけど…… 『雲雀先輩…?』 「………」 『大丈夫ですか?』 「ん…ー…っ」 目の前で手をひらひらしても反応が薄い。 ぼーっとして頬が少し赤いのは、どうやらもう酔っているらしい。 疲れているからか酔いが回るのが早いのか、それとも元々が弱いのかな? 酔いに必死に耐えて、ふらふらしてる雲雀先輩。 何だか可愛いかも…! 小さい頃、ツナが眠いの我慢してた時によく似てる。 「何、にやついてるの、君……」 『な、何でもないですよ!それより雲雀先輩、大丈夫ですか!?』 「大、丈夫だよ。これくらい…」 『大丈夫そうには見えない…って!!何してるんですか!』 「暑い……っ」 『だ、だめ!止めてください!脱がないで…っ!!』 「だって、暑い……」 『う……っ』 そんなに睨まなくても! こういう時ってどうすればいいんだろう…!? 冷たい水とか……? でも、この状態の雲雀先輩を一人残して行く訳には…っ!! 「……っ」 『雲雀先輩……って、えぇ!?』 「………ん」 ふらふらして私の方に倒れこんで来た雲雀先輩。 体重がかかり重いけれど何とか支えて声をかけた。 『雲、雀…先輩……?』 「………」 『…先輩?』 「………」 『もしかして、寝ちゃった…?』 私の肩に顔を埋めた雲雀先輩を見れば瞳を閉じて静かに呼吸している。 肩にかかる髪が、吐息がくすぐったくて、少し恥ずかしい。 『………』 「……」 さらりと髪を撫でれば眉をしかめて、くすぐったそうにする。 普段は見せない姿、可愛くて笑った。 『そういえば、仕事であんまり寝てないって言ってたっけ…?』 「………」 『お疲れです、雲雀先輩…』 雲雀先輩を膝に寝かせて、私はのんびり桜を楽しむ。 ふと雲雀先輩の黒髪に桜の花びらが、ふわりと落ちて綺麗だな、って思った。 あぁ、でも、男の子に綺麗はおかしいかな? 『……』 柔らかい風が吹いて、桜が舞って二人だけの領域。 のんびりした時間が流れる公園はとても心地よくて、私も瞳を閉じて春を感じた。 「………」 『……』 ごく自然に、桜が咲くみたいに、いつの間にか蕾になった想い。 自分でも今はまだ気付かない程、小さな気持ち。 この蕾が花咲く時はいつだろう? 私の膝ですやすやと眠る彼を見て、そっと微笑んだ。 end 2008/03/24 |