ヒバードはナツが大好きです。 落ち着くぬくもりとお花のような香り。 ご飯をくれる優しい指先。 自分の名前を呼んでくれる声。 太陽のような笑顔は、とってもとっても心地いいのです。 だからヒバードはナツと一緒にいたいのです。 ≪……♪≫ 今日もヒバードは小さな翼をパタパタと羽ばたかせ奈都の肩へととまります。 すると視線を感じます。 ツナとゴクデラ、ヤマモトの視線です。 ヒバードはゴクデラ、ヤマモト、ナツの双子の弟のツナの事をよく思ってません。 「またこの鳥、奈都さんの肩に…!!今日こそ焼鳥にしてやるぜ!」 「オレも鳥になったら奈都の近くにいられるのになー」 「だよね……、って、オレまで何、言ってんだ!?なしなし!今のなし!」 ツナ達はヒバードを羨ましいと言います。 ナツの一番、近くにいられるから、と。 確かにナツの笑顔も体温も、その声もヒバードは一番に感じられる事でしょう。 だけどヒバードはツナ達が羨ましくて仕方ありません。 ナツと同じ「ニンゲン」だからです。 彼らは同じだから、お話が出来るし傍にいられます。 自分は彼等のようになれない事を知っているから嫉妬してしまい、つい口ばしで突いてしまうのです。 傍にいたって人間の大粒の涙は短い羽じゃ拭えません。 小さな身体じゃ守れない事もヒバードは知っていました。 ≪……≫ ヒバードはそれを思うと、小さな胸がぎゅっと苦しくなります。 だけど、ヒバードもナツを笑顔にすることが出来るのです。 パタパタとナツの肩に移れば、くすぐったそうにして自分を見て笑ってくれる。 唄えば、こちらを向いてくれる、大好きな笑顔が見れるのです。 それを知ったヒバードは、それだけで十分なのです。 いつか自分が冷たくなる、その時までナツがたくさん笑顔になって欲しいと思うのです。 ヒバードにはもう一人、大好きな人がいます。 風紀委員長の「ヒバリキョウヤ」です 『雲雀先輩!今日もヒバード、いい子でしたよ!』 「…そう。それよりも奈都、応接室にはもっと静かに入って来てよ。煩い。」 『あっ!す、すみませんっ!』 口では冷たいけれどヒバリはナツの事を気に入っています。 ヒバードは、いつでも一緒だから分かるのです。 ≪ヒバリッヒバリッタダイマッ≫ 「………」 パタパタとナツの肩からヒバリの頭へと移ります。 ヒバリの頭はフワフワしていて暖かくて、とても落ち着くヒバードのお気に入りの場所です。 『相変わらず雲雀先輩の頭の上、好きですね、ヒバード!うとうとしてますよ!』 「だから、煩いって言ってるんだけど。もう少し小さな声で話してくれるかい」 『…ヒバードが目を覚ましちゃうからですか?』 「………」 『あ、図星!…照れてます?』 「照れてない」 『顔、赤いですよ』 「赤くない」 『ヒバードには甘いんですから、雲雀先輩』 「………」 『……?』 君にだって十分、甘いんだけど。 ヒバリは小さく呟きました。 もちろん、その声はナツには聞こえていません。 『何か言いましたか?』 「別に。今日の仕事はこれ。」 『はい!』 ≪……≫ ナツには届かない小さな声だったけれど、ヒバードには聞こえました。 ヒバリのまだ小さな気持ち。 だけど、どんどんと大きくなっていくスキという気持ちをヒバードは一番、知っていました。 だって「スキ」という言葉は以前、何かを確かめるようにヒバリが呟いていたのでヒバードは「スキ」を覚えたのです。 その時のヒバリの顔はとても穏やかで、ヒバードはそれがとても嬉しかったので「スキ」と言う言葉を口にしてるのです。 ≪……≫ ヒバードはヒバリとナツが大好きです。 大好きな二人が笑顔だとヒバードはとっても嬉しいのです。 だから二人に幸せになって欲しいのです。 だから、今日もまた、小さな小さな身体と拙い言葉で精一杯、伝えるのです。 スキ、ダイスキと。 ヒバードはヒバリのキモチを届けたいと思っているのです。 『ヒバード、ぐっすり眠ってますね、可愛いです!』 「いい加減、重いよ。頭が蒸れて暑いし…」 『またまたそんな事、言って!可愛くて仕方ないんでしょ?雲雀先輩ってば!』 「……咬み殺すよ」 『ヒバードを頭に乗っけて怒っても怖くないです!』 「………」 『ふふっ』 「……はぁ、まったく君は」 ヒバードは夢を見ました。 大好きな二人が寄り添っている夢を。 その大好きな二人の傍に自分も一緒にいる。 そして二人のために唄う、とってもとっても優しい夢を見たのです。 それは起きたら二人に「スキ」とたくさん伝えたくなるような、しあわせな夢でした。 ≪……♪≫ 『わっ、ヒバード、幸せそうな寝顔!』 「……ふぅん」 『雲雀先輩、実は寝顔を見たいと思ってません?』 「思ってないよ、肩が凝るし早く起きて欲しいとは思ってるけど」 『そう言いつつ、さっきからあまり動きませんよね』 「……別に、そんな事ない」 『ヒバードの写メを撮ってもいいですか?』 「……」 『……後で雲雀先輩にも送りますから』 「…一枚だけならいいよ」 『はーい!(あんまり撮ると音で起きちゃいますもんね!)』 end 2007/10/20 |