「ワォ、校歌も覚えられないなんて、君、並中に在学する資格ないよ」

『そこまで言われる程、重要なんですか!?』

「もちろん」

『も、もちろんって…!!覚えられないものは覚えられないんです!』

「はぁ…」

『ば、馬鹿にするような、ため息やめてください!大体、雲雀先輩は覚えてるんですか!?』

「当たり前だよ」



言い切ったーっ!!
しかも当たり前って言ったよ、雲雀先輩!

帰国して並盛中に通い始めて早、数週間。
色んな事に大分、慣れたけど雲雀先輩の事は未だによく分からない。

雲雀先輩に関して、はっきり分かるのはただ一つ。
それは並盛に並々ならぬ愛情があるという事。



「早く暗記しなよ。まだ応接室にいてもいいから」

『大丈夫です!ツナと頑張ります!!」

「群れるなら咬み殺すよ」

『……』



家族なんだから群れてもいいじゃないですかー!!

そんなツッコミは心の中でしか出来ない。
だって雲雀先輩が頬杖ついて私を見張っているから。

あぁ、どうやら雲雀先輩が愛する並中校歌を、この場で覚えるまで帰れないみたい。



「ねぇ、草食動物たちの名前を口に出さないでくれるかい。」

『……は?何でですか?』

「不愉快だから。」

『は、はぁ……』

「返事は?」

『は、はい!』



そんなに群れる事が嫌いなんですね、雲雀先輩…!!

そして何で、校歌を覚えなくてはいけない事になったのかというと、事の発端は音楽の授業。
つまりは歌のテスト課題。

校歌をフル暗記という、簡単なようでとんでもなく面倒なテスト。
というか、このテストを提案したのって絶対に雲雀先輩だよ!間違いないよ!

どんだけ学校を愛してるんですかって聞きたいけど聞く勇気がない。
だって100%「愛してるに決まってるでしょ」って言うに違いない。

そんな事を真顔で言われたら私、どう反応したらいいか分からないもん!



「さぁ、早く覚えなよ。じゃないと咬み殺すよ」

『は、はーい…』

≪ガンバレッガンバレッ!≫

『ありがとう、ヒバード…』



ヒバードに応援されながら私は授業で配布された校歌の歌詞が印刷されているプリントに目を通す。
こんなに長いの、私はもちろん、ツナも覚えられる訳ないじゃない!

そりゃあさ、ツナよりは勉強、出来るよ?
だけどね!私はコツコツ勉強タイプなんです、一夜漬けタイプじゃないんです…!!



「あぁ、ちなみに覚えないと帰さないから」

『はい…!?』

「僕の前でフルで歌ってもらうよ、もちろん間違えたら最初から」

『……』



音楽のテストの前に、テストきちゃったー!!
しかも、こっちの方が超難関!

ちょ、何なのこれ!
いじめ!?風紀委員新人いびりですか!?



『お、横暴です…!!』

「どうとでも言いなよ、遅かれ早かれ奈都には、いずれこうしてたし」

『え……』



必須!?
風紀委員には校歌フル暗記が必須なの!?
まさか風紀委員の皆さん、暗記してるんじゃ…!!

うわぁ…!ありえそう…!!



「どう?出来そうかい」

『な、何とか…』

「じゃあ、歌って」

『はーい…』



あぁ、歌を歌うだけなのに何で、こんなに緊張するんだろう…!!
雲雀先輩の前だと些細な事も緊張しちゃうけど、校歌を間違えたら最後。
トンファーが飛んできそうで余計に緊張しちゃう!



≪ヒバードモウタウッ!≫

『ヒバードも歌えるの?そういえば、いつも出だしを歌ってたけど…』

「ヒバードは完璧に全部、歌えるよ」

『じょ、冗談ですよね、雲雀先輩!いくら何でも全部だなんて…』

「本当だよ」

『……』

「君、鳥以下だね」

『たった今、思ってた事を言わないでくださいよ!』

≪ミードリタナビクーナミモリノー≫



パタパタと飛ぶと私の肩に着地するヒバード。
そして一番、二番、三番と一度もつかえる事なく校歌を歌った。

うわぁ、本当に覚えてる…!!
何て暗記力なの、ヒバード!!



「ねぇ」

『は、はい!』

「鳥に出来て人間の君に出来ないはずないよ」

『………』



雲雀先輩、もしかして励ましてくれてるんですか…?
励ましてくれてるとしたら、その励まし方、逆にすごーく切なくなるんですけど!!



「早く覚えないと応接室から出られないよ」

『う……っ』

≪ナツッガンバレッ!!≫



楽しそうにニヤリと微笑む雲雀先輩。
そして、いつもは可愛いヒバードなのに今日ばかりは雲雀先輩と同様にニヤリと笑ってるように見えた。

飼い主に似るって本当なんだ…!!



「さぁ、音楽かけるよ」

『いやぁぁ!もう帰りたいですーっ!!』

「帰さないって言ったはずだよ」

『ひぃぃーっ!!』



延々に続く雲雀先輩による音楽の授業。

あぁ、並盛校歌ってすごく共感が出来る。
いい歌だなと繰り返される曲を聴いて思った。

平々凡々並でいい!普通でいい!!
普通に風紀委員の活動しましょうよ、雲雀先輩ーッ!!



「音程、ずれてる」

『えぇ……!!』

「歌詞、間違えた」

『ひぃぃ…!!』

≪スコヤカゲンキ〜≫

『お、覚えられない…!!』

「喚く暇があるなら少しでも頭の中に入れなよ」

『うぅ……っ!!』



こうして雲雀先輩とヒバードに校歌を暗記させられたのは言うまでもありません…!!
約一週間の猛練習の結果、暗記完了。

それはよかったんだけど困ったことが一つ。
ある噂が流れてしまったの。

誰が広めたのか、その噂の内容は日が暮れた並盛中学校のどこからか少女が泣きながら校歌を歌っている、というもの。
声はするものの姿を見たものは誰もいない。

成仏出来ず並盛中を彷徨う幽霊だと、並盛七不思議「校歌を歌う少女」として、あっという間に噂が広まった。

幽霊の正体はもちろん、私。
姿を見たものはいないって、そりゃ雲雀先輩がいる応接室に近づく人なんていないもんね…!



end



2007/07/15

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